粒あん


 出来上がった粒あんを冷まして、二人の元へ運んだ。


「コレが粒あんっていうものだ。」


「「粒あん……。」」


 二人とも、あの小さな豆がこんな風に変わってしまった事に驚きながら、興味深そうに粒あんを眺めていた。


「あの硬い豆がこんなに柔らかそうになっちゃって……。」


「これ、真っ黒ですけど食べられるんですか?」


「もちろんだ。本来これは、お菓子に使うんだからな。」


「お菓子に……ですか。」


「まぁまぁ、食べてみれば俺の言葉の意味がわかるよ。」


 そして二人はお互いに顔を見合わせた後、粒あんをスプーンで口に運んだ。すると、二人ともカッと目を見開いた。


「んむっ!?美味しい……。」


「ねっとりと甘くて、優しい味ですね。」


 あっという間に二人は粒あんを食べ終えてしまった。美味しさをわかってもらえた所で俺は、ある提案をリコに出した。


「リコ、もしこの豆を販売するつもりがない……ということなら、俺に預けてみないか?」


「この粒あんを売るの?」


「正確にはこの粒あんを使ったお菓子を売り出そうと思う。もちろん、それで出た利益は全部リコに渡すよ。」


「こっちとしては願ったり叶ったりだけど……そこは国長に許可をもらわないと。」


 フィースタの方に視線を向けると、彼女はにこりと笑って頷いた。


「構いませんよ。」


「本当か!?」


「えぇ、あなた様の作るお菓子には私も興味が湧きましたから。」


「感謝する。」


 それなら早速明日にでも……お菓子を売り出してみよう。最初からお金を取ると取っ付きづらいだろうから、初回無料キャンペーンとかやってみるか。


「それじゃあ、早速販売するお菓子を試作したいんだが……リコ、色々と用意して欲しいものがあるんだが、用意してもらえるかな?」


「良いよ〜、ウチで用意できるものならね。」


「それじゃあ今リストにまとめるよ。」


 そして色々と用意してほしい物を紙に書いて彼女に手渡した。


「ひとまずはこんな感じかな。」


 リストを確認したリコは急いで出て行ってしまう。数分すると、大量の袋を携えて戻ってきた。


「一応、あるものは全部持ってきたつもりだけど……。」


「十分だ。ありがとう。」


 後は、提供予定のお菓子を試作して……二人の反応をまた見てみるか。

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