突き刺さる視線
翌朝……起きてすぐに鏡を見てみると、いつの間にやら擬態が解けていて、普通の耳の形に戻っていた。
「時間経過で戻るって感じなのかな。」
自分の意志で解除できないのは少し不便だが……使い道はかなり多いスキルだ。文句は言えない。
「さて、フィースタに会いに行こう。」
彼女に用意してもらった衣服に身を包んで、リビングに向かう。すると、鼻歌を歌いながら上機嫌で朝ごはんを作っている彼女の姿を見つけた。
「おはようフィースタ。」
「あ、おはようございます。もう少しで朝ごはんできますよ。座って待っててください。」
そうは言われたものの、何を調理しているのか気になったしまったので……。彼女の横からひょっこり顔を出して、調理風景を観察することにした。
「あ、あの、座ってていいんですよ?見てても面白いことなんて無いでしょうし……。」
「そんなことはないさ。フィースタには話してなかったけど、俺は料理人でな。こう、知らない食材とかが調理されてるところは、とても興味深いものがあるんだ。」
「料理人……ということは、あなた様は料理を作るのがお上手なのですね?」
「まぁ、そうだな。」
「知らない食材が見たいのであれば……今日一緒に農地を見に行きますか?ちょうど収穫期を迎えた農作物を見回るお仕事があるんです。」
「いいのか?」
「えぇ、構いませんよ。」
「感謝する。」
そして昨日の夕食に続いて、朝食もフィースタ手作りの料理を食べ、彼女と共にエルフの農地へと向かった。
その道中、街を歩いていると、やはりエルフからの視線が痛い。
「……やっぱり人間に対する印象はあんまり良くないんだな。」
「ごめんなさい。あなた様が私達の思っている人間でないことは、私は理解できたのですが……どうしても他の子達は……。」
「いや、フィースタが謝ることじゃない。悪いのは元を辿れば人間だ。」
エルフの大事な世界樹を狙ったのだから、印象が悪くなるのは当然だし、その当時を知ってるエルフも多いだろうからな。
チクチクと突き刺さる視線を感じながら、歩いているとあることに気がついた。
「そういえば、男のエルフっていないのか?」
「……じ、じつはそれが世界樹が枯れ始めていることと同じぐらい、エルフの今後を左右する問題でして……。」
どうやらエルフが抱えていた問題は、世界樹の問題一つではなかったらしい。
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