世界樹の雄花を競り落とせ!!


 ドーナが脱出の結晶を競り落としてから、程なくして……黒服の男が彼女のもとに脱出の結晶を運んできた。


「それでは白金貨1枚、こちらにお願いいたします。」


「はいよ。」


 そしてドーナがお金を手渡して、脱出の結晶を受け取った。


「それ、何に使うんだ?」


「これかい?例えば……ダンジョンの中から緊急で脱出したり、危なくなったりしたらこれを使って、登録した場所に逃げられるんだ。」


「便利な結晶だな。何人でも使えるのか?」


「そうだね、ただし一回きりだけど。」


「ふむふむ。」


 確かにあれば便利なものだな。一度だけでも、危険を完全に回避できるのは心強い。


「今のところ一番安全そうなのは……ヒイラギのハウスキットだから、後で登録しておくよ。」


「あぁ、頼むな。」


 ドーナが脱出の結晶を競り落とした後も、スムーズに競売は進み、いよいよ残るはヴェールの願いが叶うと噂の果実……もとい世界樹の雄花のみとなった。


「さぁ、今日ここにいらっしゃる皆様の殆どがこちらを待ちわびていたことでしょう!!1年に1つだけ実をつける、ヴェールが誇る神秘の果実……登場です!!」


 そして運ばれてきたのは、まるでザクロのような見た目のもの。確かによくよく見れば、花に見えないこともないな。

 それの登場に会場がざわめく中、リリンとフレイはさっき勝った分の白金貨を握りしめていた。


「絶対競り落とすわよフレイ。」


「もちろんだよお姉様!!」


 二人が意気込んだ後……いよいよ競売の火蓋が切られる。


「それではっ!!入札を始めさせていただきます!!最低金額は……白金貨10枚です!!」


 最低金額はなんと白金貨10枚……これだけでも相当高いが、開始早々貴族のような出で立ちの男が金額を吊り上げる。


「白金貨50枚だ。」


 早速飛び出したとんでもない金額に、会場がどよめく。しかし、案の定これを狙っているのは彼だけではなかった。


「白金貨100枚出しますわ。」


 負けじと貴婦人がさらに金額を吊り上げる。そして、いよいよリリンが動いた。


「白金貨150枚出すわ。」


 白金貨150枚……先程フレイ達が儲けた金額の約8割に相当する金額だ。


 リリン達という競合相手が現れると、さっきの貴婦人が露骨に舌打ちをしながら札を掲げる。


「ちっ……白金貨200枚。」


「し、白金貨200枚……どうしようお姉様。」


「くっ……こうなったら奥の手を使うしか無いようね。フレイ、あなたはここでなんとか時間を稼ぐのよ!!」


 そしてリリンは何を思ったのか、急いで競売場から出て行ってしまった。


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