交流の第一歩
獣人族と人間との交流が始まると、まずはお互いの国で厳正な審査を通過した行商人の人たちが行き来を始めた。エートリヒ曰く、観光などでお互いの国を行き来するにはまだ時間がかかるらしい。
お互いの国の雰囲気が徐々に変わっていくのを感じながら、獣人の国の王都で俺達は平和な日常を過ごしていた。
そんな時、とある一人の来訪者がハウスキットを訪れた。
「いやはや、よもや本当に獣人族との交流が始まるとは……私自身驚きましたぞ。」
そう話すのはミルタさんだ。どうやらつい先日商いをするためにこの国へ足を運び、今日王都に着いたとのことだ。
「ヒイラギさんにもらったこの本のおかげで、ある程度この国の方々の言葉は、理解できるようになりました。」
俺が送った本をミルタさんが取り出すと、その本には何度も何度も読まれた形跡が見て取れた。
「役に立ったのなら何よりでした。それで、今日はどんな用件でここに?」
「恥ずかしながら、実は商いをしようにも、なかなかこの国の商人の方と交流が持てずにいた次第でして……。」
「なるほど、そういうことでしたか。」
それならいくつか当てはある。その中でも、多分あの人なら……この国でのミルタさんの最初の取引相手にはぴったりだと思う。
「それなら一つ当てがあるので早速行ってみましょうか。」
「ほ、本当ですか!?」
「えぇ、きっとミルタさんの良い取引相手になると思いますよ。」
そして、俺はミルタさんを連れて、市場へと向かった。人間の国にはない肉や野菜にミルタさんは眼を輝かせている。
「おぉ!!やはり国が違えば市場に並んでいる品物もまるっきり違いますな。」
「多分見たことないものばかりだと思いますよ。」
そんなことを話しながら歩いていると、俺の姿を見たいろんなお店の店員が声をかけてくる。
「勇者様~!!見てってくださ~い!!」
「安くするよ勇者様!!」
「あ、あはは……ありがとうございます。今度寄りますね。」
思わず苦笑いしながら手を振っていると、ミルタさんが不思議そうな顔をしていた。
「ヒイラギさんが……勇者?これはいったい?」
「そ、その辺は、後々…彼らと仲良くできたら聞いてみてください。」
さすがに自分の武勇伝を語るのは恥ずかしい。その話は、いずれ獣人の人たちと仲良くできたら聞いてみてほしい。
「これはまた楽しみが一つできましたな。」
ニコニコとミルタさんは笑顔でそう言ったっきり、追及してくることはなかった。
そして、彼を案内してとあるお店の前に辿り着いた。
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