第五章
収束を迎える事態
それから数日の時が流れ、事態はようやく収束の気配を見せつつあった。
突然の国王の死というニュースで国がざわめき立っている中、エートリヒがついに正統な後継者として名乗りを上げたのだ。彼の後ろにはバイルやカムジン、それにダグラスといった国の重役たちがついているから、彼が国王の座に就くのは時間の問題だろう。
問題の戦争については、自国で起きた問題を収束させるため白紙になった。
そして現在、俺とシンは国の重役達とともに円卓を囲んでいた。
「では獣人族側は私たち人間との同盟を望んでいるということでよろしいか?」
彼の言葉を通訳してやると……。
「うむっ!!」
カムジンの問いかけにシンは深くうなずいた。言葉は伝わらないようだが、シンがうなずいたのを見て了承しているという意思は、しっかりと彼らに伝わったようだ。
「これからの国のため私は獣人族の国王殿の意向に沿い、新たな国王陛下が決まり次第、獣人族との同盟を結ぶため動きたいと思う。異議のあるものは?」
「「「異議なし。」」」
カムジンが異議のある者がいないか問いかけると、満場一致で同意ということだった。これでエートリヒが国王になった時、獣人族との同盟が無事に実現するだろう。
「それではこれにて会議を終了します。ご苦労様でした。」
王城の会議室を出て廊下を歩いている最中、シンが話しかけてきた。
「これでヒイラギの計画通りになったな。」
「そうだな。」
確かに思い描いていた通りに事態は進んだ。いろいろと予想外のこともあったがな。だが気にかかっていることがある。
レイに話を聞いたところ、彼女は死の女神の眷属に捕まり、国王のもとへと連れてこられたという話だった。ということは、死んだ国王は死の女神と繋がっていたのは間違いないのだ。
それなのに、奴らは国王のピンチには駆け付けなかった。単に裏切られたのか?それともこの一連の騒動は、何かの時間稼ぎにすぎなかったのか……それが胸にひどく引っかかっている。
考えすぎか?いや、だがあいつらが何の目的もなしに行動を起こすとは考えにくい。となれば何か思惑があるはずだ。それが何かは定かではないが……。そんな疑念を抱えたまま、俺とシンは王城を後にした。
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