腹が減っては…
出来上がったステーキ丼をもって厨房から出ると……。
「お兄さん!!もうできたのっ?」
シアが俺のもとへ一目散に駆け寄ってきた。
「待たせてすまなかったな。さ、早く食べようか。」
「うんっ!!えへへ……シアお腹ペコペコ〜。」
そして、みんながいつも座っているテーブルに料理と箸を並べた。その後バイル達のもとへ、料理を持っていく。
「すみませんお待たせしました。」
「おぉ!?こりゃあ……肉か?」
「焼いた肉の下に何か白いものが……これはいったい?」
この反応……バイル達でさえ米は見たことがないらしいな。やはりこの世界にはないのか?
「今回は、シンプルに焼いたサラマンダーの肉を……。」
「待て待て待てっ!?この肉なんの肉っつった!?」
料理の説明をしようとすると、バイルにそれを遮られてしまう。もしかして、魔物の肉は嫌なのだろうか?
「サラマンダーですけど……あ、もしかして魔物の肉は苦手でした?」
「「「そういうことじゃないっ!!」」」
またしても全員に、同時にツッコミを入れられてしまった。
「なんで飯に龍種の肉が普通に出てくんだよ!?」
「極上とされる龍種の肉‥……私、初めて食べますよ。」
「いやカムジン殿だけではない。恐らくバイル殿も初めてだろう。私とて食したことはない。」
目を見開きながら肉を眺めているバイル達三人。しかし、ここで予想外の行動をとる人物がいた。
「い、いただけません!!こんな希少な龍種の肉なんて……。」
自身の前に置かれたステーキ丼を、ずいっと前に押し出してキースは言った。キースに続き、騎士団の人たちも同じ行動をとった。
別に遠慮することないのに……サラマンダーの肉なんてまだまだいっぱいあるし。
「別に遠慮しなくていいんですよ。多分、お腹空いてますよね?」
「う……そうですが、しかし。」
「腹が減っては戦はできぬと、昔から言われています。今、ここであなたが食べないという判断をすれば、他の騎士の方もお腹を空かしたまま、明日王都へ向かうことになるんですよ?」
空腹では最高のパフォーマンスなんて、発揮できるわけがない。明日王都に着けば、嫌でも戦わなければならない場面に遭遇する。そんな時に力を発揮できなければどうなるかは、このキースって人もわかっているはずだ。
そして俺は食べることの大切さをキースと、騎士団の人達に説くのだった。
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