ハズレのクジ


「お嬢ちゃんついてないねぇ~、今回も全部ハズレだ。」


「うぅ、お兄さんごめんなさい……。」


 またしても全てハズレ……コレでもう20回引いた。当たりが出なかったせいで、シアは今にも泣き出しそうになっている。


「大丈夫だぞシア。」


 一先ず泣き出しそうになっているシアをなだめる。そして改めて店主に向き合った。


「この中には絶対当たりが入ってるんだよな?」


「もちろん入ってますよ~?」


 店主は入っていると言うが……その後俺が何十回と引いても小さいぬいぐるみ一つ当たらなかった。明らかにおかしい。


「お客さん運がないねぇ~。こんなに引いても当たんないなんて。」


 どさりと積まれたハズレくじの山を見て、店主は薄ら笑いを浮かべながら言った。これ‥多分やってるよな。


 日本の屋台でも良くある、いわゆる絶対に当たらないくじ屋と同じ事をこの店主はしてるんだろう。そっちがその気ならこっちにも考えがある。俺は一枚の硬貨を指で弾いて店主の前に落とした。


「しっ……!!白金貨ぁ!?」


「それでその箱の中のくじ全部買えるだろ?なに……当たらないなら、当たるまで引き続ければいいだけだ。」


 くじを全て買うと言った途端に店主の顔色が悪くなる。まさかそんな客いると思ってなかったんだろう。


 恐らくこの中には当たりくじなんて入ってない。それを知られるのが怖いんだ。


「さぁシア、この箱の中にあるの全部引いていいぞ。」


「ホント!?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」


 シアが意気揚々とくじを引こうとすると、店主は待ったをかけた。


「なんだ?」


「い、いや……今日はもう店じまいにしようかって。」


「あ゛?」


 ふざけた事を抜かしている店主に顔を近づけると、俺は殺気をむき出しにして囁く。


「当たりが入ってないのはわかってんだぞ?」


「ひっ!?」


「あの一番上にあるブラックフィッシュのぬいぐるみ……その番号のくじを入れれば見逃してやる。わかったな?」


 すると店主は必死にコクコクと頷く。そして冷や汗をダラダラと流しながら、シアにくじの入った箱を差し出した。


「さ、さぁお嬢ちゃん……引いていいよ~?」


 シアがくじを引く前に、スッと箱の中に店主は何かを入れた。恐らくあれが当たりくじなんだろう。


「頑張れよシア。」


「しあちゃん…がんばって。」


「うん!!」


 そしてくじを引き始めて何度目かで、めでたくお目当てのブラックフィッシュのぬいぐるみをゲットすることができた。


 ぬいぐるみ一つに白金貨一枚は高いとは思うが……シアの顔に笑顔が戻らないよりはマシだ。親バカというのはこういう気持ちなんだろう。また一つ理解が深まった。

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