洗脳が解けて


 それから少しすると……。


「うっ、いっつつ…ここは……?」


「目が覚めたようだねルーカス。」


「オ、オーナルフか?何で俺はここに……ってそっちで寝てんのルシアとセレナじゃないか!?」


 目が覚めたルーカスという男は、ここに来たという記憶がないらしい。


「ここに来た記憶がないのかね?」


「あ、あぁ……それどころかここ何日間の記憶がほとんどない。」


「なるほど、では一番新しい記憶を教えてくれ。」


「覚えてんのは、国王陛下に戦争の案を考え直してほしいと直談判に行ったんだ。ルシアとセレナも一緒に……。」


 洗脳されたのはその時だな。厄介なのは、洗脳されている間の記憶がないこと。これでは洗脳を証明できない。


「ではルシアとセレナの二人も同様に記憶が無いとみて間違いなさそうだ。貴公はどう思うかね?」


「同感です。恐らく国王に直談判しに行った、その時にまとめて洗脳されたんでしょう。」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。洗脳だって!?いったい何の話をしているんだ!?」


 ルーカスなる男は、こちらの話しについていけない様子で言った。


「いいかねルーカス、信じられないかもしれないが……君達三人は国王に洗脳されていたんだよ。」


「俺達が洗脳されてただって!?」


「それを裏付ける質問を今からしよう。この質問は少し前、洗脳されていた状態の君に聞いたものなんだが……。」


 エートリヒはルーカスという男の横たわるベッドに近付いた。そして、さっきと全く同じ質問を投げ掛けた。


「君は今回の戦争の案についてどう思っているのかね?」


「そんなの……に決まってるだろ?」


 さっきとは真逆の答え。それを聞いてエートリヒは少し安心しているように見えた。


「そうかね、さっき君はその案に大いにしていたのだよ?」


「そんな馬鹿な……。」


 エートリヒの言葉が未だに信じられないといった様子で彼は俯いた。信じられないのも無理はない。誰だって急にお前は洗脳されていた。と言われてもそれを鵜呑みにして信じることはできないだろう。


「ちなみにルシアとセレナも二人とも賛成していたよ。まるでとりつかれたかのように、国王のことを褒め称えながらね。」


 ルーカスという男が愕然としている最中、隣で寝ていた二人が目を覚ました。

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