消えたゴブリン


 しばらく馬車で進んでいると……。


「ヒイラギさん!!前方に魔物っす。」


「あれは、ゴブリンか?それにしては筋肉ムキムキだな。」


 緑色の特徴的な皮膚の色は、以前見たことがあるゴブリンの特徴そのものだが……痩せ細っておらず、むしろ肉付きがいい。

 棍棒をポンポンと手のひらに当てながら、こちらの行く手を塞いでいる。


 戦うしかないか……とグレイスに馬車を止めてもらおうとしたその時だった。


「グギャ!?」


 ヴヴヴ……という特徴的な羽音と共に、何かがそのゴブリンを持ち去ってしまった。


 その後ゴブリンが消えていった方向から、けたたましい悲鳴が聞こえる。


「な、なんだったんすか、いまの……。」


「さぁな。」


 まぁ、だいたい想像はつくが……。


 後ろの馬車を覗いてみると、メリッサが一匹のハチを召喚してシアと一緒に撫でていた。

 さっきのゴブリンを持ち去ってしまったものが、メリッサの配下のハチだったら、あのゴブリンはとても悲惨な末路をたどったのだろう。


「ま、何事もなくてよかったな。」


「ホントっすね~。」


 何事もなく進めるのなら、それに越したことはない。


「グレイスはまだ全然余裕か?」


「そうっすね~、まだまだ余裕っす!!」


 なら休憩はまだ先でいいか、今は進めるところまで進もう。今日のうちに出来る限り距離を稼いでおきたいからな。


「それじゃ、もう少し進んでから昼御飯にするか。」


「今日の昼御飯は何にするっすか?」


「グレイスは何を食べたい?」


「自分はヒイラギさんが作るご飯だったら何でもいいっす!!」


 ストックしている料理のなかで、昼御飯にちょうどいいやつ……なんかあったかな?

 自分が作って保存しておいた料理を思い返していると……。


「確かハンバーグ作ってたよな。あれなら昼御飯にちょうどいいんじゃないか?」


 腹にもたまるし、確かチーズとか大根おろしとか、いろんな種類作ったはずだから……。好きなのをみんなに選ばせてもいい。

 よし、今日の昼御飯はそれに決まりだな。


「じゃあグレイス、もう少し頑張ってくれ。」


「了解っす!!」


 昼御飯を目の前にしたグレイスは、張り切って馬車を引っ張るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る