エートリヒという人物


「それで、話の本題なんですが。実はある人を探してるんです。」


「ふむ、人ですかな?」


「えぇ、人脈が広いミルタさんなら、もしかしたら知ってるかと思いまして。」


「なるほど……そういうことでしたら、力になれるかもしれません。なんという名前の人物を探しているのですかな?」


「姓にという名のある人を探しています。」


 アルマ・エートリヒ……それが謀反を起こされた国王の名前だ。その人の子孫も、名前を変えていなければ、エートリヒという姓を受け継いでいるはず。


「エートリヒ……どこかで聞いたことがあるような…。」


「思い出せそうですか?」


「少し時間をいただけますかな?確認して参ります。」


 そう言ってミルタさんは、一度部屋を出ていった。


「姓を持ってるぐらいだから、どっかで貴族になってそうだけどねぇ。」


「そんなに分かりやすいなら苦労はしないんだがな。」


 そして数分すると、ミルタさんが何枚か紙を持って部屋に戻ってきた。


「お待たせしました。」


「いえ、大丈夫です。それで何か手がかりになりそうなものはありましたか?」


「えぇ、何年か前にマーレという海街でという貴族の方と取引したことがありましてな。」


「オーナルフ?エートリヒじゃないじゃないかい?」


「いえ、その方がエートリヒという名前を、納品書に間違って書いたことがあるのですよ。」


 ミルタさんに見せられた紙に書いてあった名前には、確かにとサインがしてあった。


「これって見せちゃって大丈夫何ですか?」


「本当はお客様の個人情報ですから、よろしくはないですが……他でもないヒイラギさんの頼みですからな。何卒他言無用でお願いしますぞ。」


「もちろんです。」


 あの時ミルタさんを助けて、本当によかった。お陰で、かなり有益な情報を手に入れることができた。


「貴重な情報をありがとうございます。おかげさまで助かりました。」


「いえいえ、この程度どうってことありません。今からマーレに向かうご予定ですかな?」


「えぇ、これから向かおうと思ってました。」


「では私からこの方に紹介状を送っておきますよ。」


「いいんですか?」


「その方がヒイラギさんのためになりそうですからな。」


「助かります。」


 よし、これでその人と接触しやすくなったぞ。後は向かうだけだな。

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