二人の覚悟


 朝ごはんを食べ終わった俺達は、ミルタさんに会うために準備を進めていた。


「それじゃみんな、俺はマジックバッグの中に入ってるから。」


「わかったわ。」


 関所で俺のステータスカードを確認されることを防ぐため、一度バッグの中に隠れて関所をやり過ごすことにする。

 俺の情報は極力表に出さないようにしないと、みんなの身に危険が及んでしまう。


「じゃあミルタの店の近くに着いたら合図するよ。」


「あぁ、それじゃ頼むぞ。」


 バッグの口を開き、中へと足を踏み入れた。相も変わらず中は不思議な空間だ。


「後は合図を待とう。」


 なにもない空間にごろんと横になり、ドーナの合図を待つことにした。


「ふぁ……なんか横になってたら眠くなってきたな。」


 少し休んでるか。ミルタさんの店に着くまで、まだ時間はあるだろうしな。





 街へと歩いている途中、ランはふとドーナに話しかけた。


「ねぇドーナ?」


「どうしたんだい?」


「さっき、リリンにヒイラギが呼び出されてたのよ。たまたまその会話を耳に挟んじゃったんだけど……。」


「わざわざヒイラギと二人になって話してたんなら、重要なものなんじゃないのかい?」


「そうなのよ。その話によるとね、昨日の夜ヒイラギを殺しに来た人間が現れたらしいの。」


 ランの言葉にドーナの表情が凍りついた。そして徐々に怒りに染まっていく。


「しかもその人間は、国王からの命令で来たらしいわよ?……それについてあなたに質問があるんだけど、いいかしら?」


「……なんだい?」


「このままいけば、もしかすると人間全てがヒイラギの敵になる可能性があるわ。人間のあなたは、それでもヒイラギに寄り添う覚悟はあるのかしら?」


 国王がヒイラギを敵視しているということは、その仲間も然り。ドーナだって例外ではない。

 ヒイラギに付いていくということは、ドーナは自分の種族を裏切るということに他ならないのだ。


 それを重々理解しながらも、ドーナはランに質問の答えを返した。


「アタイは人間が全員ヒイラギの敵に回ろうが、世界中の全種族が敵になろうが、ヒイラギの味方だよ。ランだってそうじゃないのかい?」


「ふふっ、ワタシの心配損だったみたいね。そうよ、ワタシだってヒイラギの味方。これからもずっと……ね。」


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