あ〜ん


「おなか…いっぱい。とっても…おいしかった。」


お腹がいっぱいになったメリッサは、今とても幸せそうな顔をしている。


「さて、それじゃ今度は俺が食べようかな。」


「ぱぱ…どれたべるの?」


「そうだな、まずはエビの刺身の方から食べようかな。」


「とって…あげる。」


 そう言ってメリッサは、おぼつかない手つきで箸を握った。 見よう見まねにしては、しっかりと持ち方はあっている。


 初めて出会った時から感じてはいたが、やはりメリッサは学習能力がとても高いようだ。


「んと…これに…つけて。はい…ぱぱ。」


 プルプルと震える箸で、エルダーシュリンプの刺身をつまみ上げ、メリッサはそれを俺に差し出してきた。


「あ、ありがとう。」


 醤油がポタリ……と、こぼれる前に差し出された刺身を食べた。

 エルダーシュリンプのお刺身は、食感がプリップリで、噛んでいて楽しい。それに噛めば噛むほど、エビの甘味がどんどん出てくる。

 エビチリのように火を通しても美味しいが、こんな感じで刺身にしても美味しいな。


「ぱぱ…おいしい?」


「あぁ、美味しかったぞ。」


 ポンポン…とメリッサの頭を撫でてあげる。


「ドーナ、ワタシ達…娘に負けてる気がしない?」


「ちょうどアタイもそれを思ってたとこだよ。」


 なぜか二人はメリッサに嫉妬の目を向けている。別に嫉妬するほどのことじゃないと思うんだがな。


「ぱぱ…次はどれ?」


「ん~、そうだな。じゃあ次は……。」


 次食べるものを言おうとすると。


「メリッサちゃんばっかりズルい~!!次はシアがやってあげるっ!!」


「あぅ…とられ…ちゃった。」


 役割をとられたことで、メリッサの表情がズーン……と重く沈んだ。


「ふ、二人とも?交代でな?」


「こうたい?」


「シアがやったら、次はまたメリッサがやって……っていうのを繰り返すってことだ。」


 意味を理解したのかメリッサの表情が明るくなり、コクコクと頷いた。


「えへへぇ~♪じゃあお兄さん、どれ食べるの?」


「じゃあ今度はそこのカニをとってくれ。」


「これ?」



 シアはキングクラブの身をサッと出汁にくぐらせて、醤油をつけて俺に差し出してきた。


「はいっ!!」


「ありがとう。」


 カニの身を口に含み、ゆっくりと味わう……。噛む度にカニの繊維がほぐれ、濃厚な旨味があふれだす。


 エルダーシュリンプに負けず劣らず……これもとても美味しい。


「お兄さん美味しい?」


「あぁ、美味しいよ。」


「つぎっ…つぎは…わたし。」


 そして代わる代わる二人に給仕され、少しずつお腹を膨らませるヒイラギだった。

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