梅干しは誰の手に…
グレイスにご飯を食べさせていると、後ろの馬車から声にならない悲鳴が聞こえた。
どうやら梅干しの入ったおにぎりを誰かが食べたらしいな。
さてさて……誰が食べたのかな?ちらりと後ろを覗いてみると。
「~~ッ!!」
リリンが自らの口元を押さえて悶絶していた。周りのみんなは何事かとびっくりしている。
「リリン、どうしたんだ?」
「~~ッ!!む~~ッ!!」
ぶんぶんと両手を振りながら、必死に何かをアピールするリリン。
多分酸っぱいってことを言いたいんだろうな。生殺しも可哀想なので、水をリリンに手渡すと凄まじい勢いでゴクゴクと飲み始めた。
「ん~!!ぷはぁッ……。」
水を飲み終わったリリンは、ジロリとこちらを睨み付けてくる。
「ちょっとあなた……なんかコレ、すっごく酸っぱかったわよ?」
「いや~、梅干しのおにぎりは一個しか入れてなかったんだが、その一個を的確に引き当てるなんてリリンは運がいいな。」
「いいわけないでしょ!!むしろ逆よね!?」
「まぁそれは捉え方次第だな。まぁほら、残りのやつには入ってないから安心してくれ。」
なんだかんだ言いながらも、リリンはちゃんと全部梅干しのおにぎりを食べきって、次のおにぎりに手を伸ばしていた。
「あむっ……。うん、これはちゃんと美味しいわ。」
別の具が入ったおにぎりを食べたリリンは、酸っぱくないことに安心したようだ。
「さて、俺も食べるとするか。」
俺もおにぎりに手を伸ばし食べ始めた。まだまだ先は長いから、しっかり腹ごしらえしておかないとな。
そして朝食を終えてしばらくガラガラと進んでいると、まだ昼前だというのに遠くの方に目標地点だったベルグと共に戦った街が見えてきた。
やはりグレイスが馬車を引いているのが時短になっているのだろう。普通の馬ならこうはいかない。もちろん休ませる必要もあるだろうしな。
そう考えると、ここまで全く休憩せず馬車を引き続けても息一つ切らしていないグレイスは、流石竜種……と言わざるを得ない。普通の馬とはパワーもスタミナも段違いだ。
「グレイス、あそこの街に着いたら一旦休憩を挟もう。」
「了解っす!!」
ひとまず一度休憩を挟んで、シン達とここからの予定について話し合うとしよう。
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