進化したグレイス


 グレイスが脱皮してからしばらく経つとドーナ達も目が覚め、ベッドから体を起こした。


「みんなおはよう。」


「お兄さんおはよ!!」


「おはようヒイラギ、ん~っ…よく寝たわ~。」


「ヒイラギおはよう。相変わらず起きるのが早いねぇ。」


 みんなと挨拶を交わした後、グレイスの脱皮についてランに聞いてみることにした。


「なぁラン、ちょっと聞きたいことがあるんだが。」


「なぁに?」


「今朝グレイスが脱皮をしたんだ。」


「あら?珍しいわね。成竜になってから脱皮なんて滅多にあることじゃないわ。」


 これはグレイスの言っていた通りらしい。大人の竜になってからは脱皮なんて滅多にしないようだ。


「でもまぁ、何で今頃脱皮したかは想像はつくけどね~。」


 そしてランはグレイスの方に近付くと、両手でひょいっと持ち上げた。


「普通の脱皮なら体が大きくなるだけ…なんだけど。やっぱり体の形も少し変わってるし、色も変わってるわね。」


「つまりどういうことっす?」


「グレイス、あなた進化したのよ。」


 グレイスの体が以前と違うのはそういうことだったのか。進化……そういえばフレイも俺の血を飲んで進化したってリリンが言っていたな。進化に必要な何かを体に取り込むことで進化するという仮説が正しいのなら……。


「もしかして、グレイスはサラマンダーの肉を食べたから進化したのか?」


「たぶんそうだと思うわ。サラマンダーがグレイスより力のある竜だったのは間違いないし、その肉をあれだけいっぱい食べれば進化するのは当然だと思うわ。」


「自分進化したっすか!?やったっす~!!」


 パタパタと飛び回りながら喜ぶグレイス。


「この世界の進化の鍵ってやつが少しわかった気がするな。」


 自分よりも強い相手の肉を大量に体に取り込むことで、種族として進化できる……。となれば誰しも、今後食べるもの次第で進化する可能性が十分にある。

 だが、人間や獣人なんかは進化するのか?今のところ身近で進化しているのが吸血鬼とワイバーンだからな……。その辺は後後調べておこう。


 まぁ兎にも角にも、グレイスにはその進化した力を今日の旅路で思う存分発揮してもらおうか。

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