出発までに…


 朝食を食べ終えたところで、早速各々行動を始めることにした。


「我とミクモ殿は引き継ぎの作業に移ろう。」


「行ってくるのじゃ~。」


 シンとミクモは王宮の中へと入っていった。それを見送ると、俺の隣でリリンが大きなあくびをしていた。


「ふわぁ~……私達は明日に備えて夜まで寝直すことにするわ。あなた達の時間感覚に合わせないと。」


「そっか、わかった。」


「ヒイラギさんまたね~!!」


 そしてリリン達も王宮の中へと戻って行った。


「さて俺達は……っと。」


 みんなの様子を伺ってみると、元気を装ってはいるものの、疲れが抜けきっていないようにも見える。


「みんな、今日はゆっくり休んでくれ。明日は少し長旅になるからな、疲れが残っているとツラいぞ?」


「それじゃあその言葉に甘えて、少し休ませてもらおうかしら。」


「あぁ、そうするといい。出発前の準備とかは俺がやっておくから、その辺は心配しないでいい。」


「ヒイラギは休まないのかい?」


「俺か?ん〜、まぁある程度睡眠はとれたからな。問題ない。」


 そう答えた俺に二人は苦笑いする。


「ホント、ヒイラギって疲れ知らずよね?」


「一番疲れてるはずなんだけどねぇ。」


「まぁまぁ、俺のことは心配せずにゆっくり休んでくれ。ほら、そうこうしてるうちに、シアがうとうとしてきてるみたいだぞ?」


 さっきから静かだな~と思っていたが、シアも満腹になって眠気が襲ってきてるみたいだ。


「あら、ホントね。じゃあワタシ達はゆっくり休ませてもらうわ。」


「ヒイラギも無茶はしちゃダメだよ?」


「わかった。夕方までには戻るよ。」


 二人にそう約束した後、みんな王宮の中へと戻っていった。


 さてさて、それじゃあ準備を始めようか。


 いざソファーに手をついて立ち上がろうとすると……。


「ふぎゅっ!?」


「ん!?グレイス!?」


 満腹になって、幸せそうな顔をして寝ていたグレイスを手で潰してしまった。


「ご、ごめんな?気が付かなかった。」


「このぐらいシアちゃんに比べればどうってことないっすよ。……ていうか、ヒイラギさん一人っすか?他のみんなはどこ行ったっす?」


「みんなは疲れてるから休みに行ったよ。グレイスは疲れてないのか?」


「自分っすか?別にヒイラギさん達みたいに戦ってた訳じゃないんで、疲れてはないっす。」


「そうか……。どうする?みんなと一緒に寝るか……それとも俺と一緒に明日の準備をするか?」


「そんなの決まってるじゃないっすか!!もちろんヒイラギさんと一緒に行くっす!!」


 決意を固めたグレイスは、パタパタとこちらに飛んできて肩に掴まった。


「グレイスちゃんはこっちですよ♪」


 それも束の間、ひょいっと後ろからイリスに持ち上げられ、グレイスは結局イリスの胸に抱かれてしまった。


「イリスも一緒に行くか?」


「一人でじっとしてるのはつまんないですからね♪あっ、大丈夫ですよ?ちゃんといっぱい神華樹の果実持ちましたから。」


 どうやら準備万端のようだな。


「よし、じゃあ行くか。」


 ハウスキットをしまい、グレイスとイリスとともに街へ向かって歩き出した。

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