第四章

エンリコの今後の処遇


 エンリコとの激闘から1日経ち、再び獣人族の国は平和を取り戻していた。


「ん〜っ、ふあぁ……もう朝か。」


 窓から差し込んだ朝日で目が覚め、むくりと体を起こし背伸びをした。


「みんなはまだぐっすりだな。」


 ベッドの上ではまだみんなぐっすりと眠っている。


 昨日はまるで嵐のような1日だったからな。みんなも疲れたんだろう。今日はゆっくり休んでほしい。


「今日はやることが盛りだくさんだ……。さっさと動こう。」


 ピンッと立った寝癖を直し、ドアを開けて廊下の外へと出るといつも通りレイラが出迎えてくれた。


「おはようございます。ヒイラギ様」


「おはようレイラ。もうシンとリリンは集まってるのか?」


「はい、お部屋でお待ちになられております。」


「わかった。それじゃあ案内してくれないか?」


「かしこまりました。こちらです。」


 レイラに続き、二人が待つ部屋へと向かう。表向きには襲ってきた魔物は討伐したことになっているが、実のところまだ生首の状態で生きている。


 リリンが血の盟約を発動させないために殺さず、生け捕ったのだ。

 血の盟約が発動すると大幅にステータスが上昇する。流石にヤツに血の盟約を使われたら万事休すだった。


「ヒイラギ様こちらでございます。」


「ありがとう。」


 そんなことを思いながら歩いていると、あっという間に目的の部屋についてしまった。


「それでは私はお外でお待ちしております。」


 そして部屋の扉を開けて中へと入ると、シンとリリンが向かい合わせで座っていた。


「む、来たかヒイラギ。」


「すまない、またせてしまったか?」


「いいえ、大丈夫よ。私も今来たところだし…。さて、それじゃ早速本題に入りましょうか。」


 リリンは深紅色の四角い箱を机の上に置いた。


「開きなさい。」


 彼女のその言葉と共に箱がパカッと開き、中身が出てくる。


 その瞬間……。


「てめぇらァ!!噛み殺してやるァ!!」


 生首が怒声を上げながら転がった。


「なるほど貴様が死の女神の幹部か。」


「だったらなんだってぇんだァ!?獣風情が見下しやがって!!殺されてぇのかァッ!!」


 生首のまま騒がしく喚き立てるそんな姿を見て、リリンは呆れたようにポツリと言った。


「みっともないわね。負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ。」


「何だとこのアm……」


 リリンが不快そうな顔で人差し指をクイッと動かすと、再び真っ赤な箱がヤツの生首を収納した。


「とまぁ、こんな感じな訳よ。完全に殺しきれないのは残念ではあるけれど、血の盟約を発動させられたら勝てなくなっちゃうしね。」


「何はともあれこのように無力化して生け捕りにできたのは大きな戦果だな。尋問すれば何か情報を吐くかもしれん。」


「相当口は堅いと思うが……。」


「そこは我に任せてもらおう。この国には、尋問を専門とする獣人がちゃんとおるのだ。」


 尋問を専門としているとか、明らかにヤバそうだ。この先いったいどんな事がコイツに待ち受けているのか想像するだけで、背筋に悪寒が走る。


 だが、餅は餅屋って言うし……尋問はシンの言っている獣人に任せて問題なさそうだな。

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