初めての吸血体験
上着を脱いで、椅子の背もたれに胸を預ける。
「これでいいか?」
「うん、大丈夫ちょっと触るね。」
ピタっと背中にフレイの手が触れる。肌がとても白かったため体温も低いのかと思ったが、そんなことは無いようだ。ちゃんと人肌程度のぬくもりを感じる。
「すごい心臓がバクバク動いてる。緊張してるかな?」
「そりゃあ女の人に裸を見られたらこうなるさ。」
「そっか、えへへっ…。ヒイラギさんにボクはちゃんと女の人って見られてるんだ。」
くすくすとフレイは嬉しそうに笑いながらそう言った。
「それじゃあ最初ちょっとだけ痛いかもしれないけど…準備はいい?」
「あぁ大丈夫だ、始めてくれ。」
「それじゃあ、はむっ……。」
フレイが肩に口を当てた瞬間、痛みよりも熱さを感じた。そして何かが吸われていくような感覚がする。
これが吸血される感覚か、献血よりもよっぽど血を吸われている感じが強いな。
ごくごくとフレイは喉を鳴らしながら俺の血を飲んでいる。美味しいものなのだろうか…吸血鬼だから特殊な味覚なのかな?
スッポンの生き血を焼酎で割ったものは口にしたことがあるが、あれは好き嫌いが分かれる味だったのを覚えている。
「んくっ、んくっ……ぷはぁ!!」
何分かするとフレイが肩から口を離し、トロンと蕩けた表情を浮かべている。そう、まるで酔っ払ったかのような感じのあの顔だ。
「も、もういいのか?」
「も、もうちょっとだけ…いいかな?」
「好きにするといい。」
そしてフレイが再び血を吸い始めて30分ほどが経過した。な、なんだろう…すごい頭がボーッとしてきたぞ。
流石にそろそろ……と、フレイに声をかけるが……。
「んふ~、んくっ…んくっ……。」
すっかり夢中になっているようで、聞こえていないようだ。
(ま、不味いぞ……。だ、誰かいないのか?)
助けを求めようとするが、俺とフレイ以外はこの部屋にはいない。てか紅茶淹れに行ったライラはまだ来ないのか!?
頼みの綱のライラが来るのを待っていると、部屋のドアが開き頬がパンパンに腫れたリリンが入ってきた。
「うぅ~痛いわ。フレイったら酷いことするんだから。」
リリンは腫れた自分の頬をスリスリと手でさすりながらぼやいていた。
(こっちはそれどころじゃないんだ!!早く気付いてくれ!!)
そして俺は朦朧とする意識のなかで彼女の名前を呼んだ。
「り、リリン…。」
「んぇ?えっ?ちょ、ちょっとフレイ!?彼が干からび始めてるわよ!?」
ようやくこちらに気付いたリリンはフレイを俺から引き剥がしてくれた。
(な、何とかなった…か。)
そこで俺の意識は闇の中に沈んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます