隷属からの解放
「ミース、ちょっと来てくれるか?」
「は、はいっ!?」
闘技場の入り口で、ドーナたちと一緒にこちらの様子を眺めていたミースが急いでこちらに駆け寄ってくる。
「これを見てくれ。」
男の左手から腕輪を無理矢理外してミースに見せた。しかしミースはその腕輪が何かわからない様子で首をかしげる。
「えっと、これは?」
「まぁ、見ただけじゃわからないよな。これは隷属の腕輪っていうアイテムらしいぞ?」
腕輪が何かを知らないミースに名称を教えてやると、一気に彼女の表情が変わり真剣な表情になった。
「そ、それは本当なんですか?もし本当にそれが隷属の腕輪だったとしたら国に報告しないと…。」
「俺は鑑定のスキルを持っているから間違いないはずだ。」
こいつの話じゃこの腕輪に鑑定は使えないという話だったが…なぜか俺は使えた。だがそのおかげでこれが隷属の腕輪であることが確信できる。
「それならこれの被害者は…まさか。」
ミースは観客席に座っている二人の女性を見た。無表情で、何も喋らない。まるで人形のような様子の二人だ。
「あの二人で間違いないだろう。」
「ど、どうすれば!?隷属化の解除方法なんて王都に行かないとわからないし…ここでは何も。」
あまりにイレギュラーな事態にミースがテンパり始めた。
そんな彼女に俺は落ち着きながら、あることをお願いする。
「ミース、あの二人をここに連れてきてくれないか?」
「えっ!?あっ、ハイわかりました!!」
パタパタと走ってミースは観客席へかけ登り、二人を引き連れてきた。
「連れてきましたけど、何をするつもりですか?」
「やれることはやってみようと思ってな。少し試してみたいことがあるんだ。もしかすると、隷属化を解除できるかもしれない。」
消えかかっていたブレスオブディザスターを再び腕に纏わせると、二人の腕輪に触れた。すると男と二人の女性の間に今まで見えなかった鎖のような物が出現したのだ。
「こいつを消せれば……。」
赤黒いオーラをその鎖へと向かって流し込んでいくと、すぐにパキリとヒビが入り次の瞬間には腕輪ごと粉々に砕け散った。
「上手くいったかな?」
「ヒイラギさん、いったい何をしたんですか?」
「この男と彼女たちの間にあった繋がり?っていうのかな、それを消し去った。」
それから少しすると、二人の女性の目に光が戻った。先程までの目とはまるで違う、生き生きとした目だ。
二人はお互いに顔を合わせると抱き合って泣き始めてしまった。
その後二人は医務室でメンタルケアを受けるためにミースが連れていった。
男はというと、あの後すぐに兵士が来て拘束された。ミースの話によると、あの隷属の腕輪という物は旧人族の遺産らしく、使用は現在禁止されているためとても大きな罪になるとのことだ。
そして騒ぎが収まったのち、俺たちはギルドを後にするのだった。
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