纏い衣 滅


 溢れ出してくる怒りが赤黒いオーラとなって身体中に纏われていく。


「なるほどな、どおりで普通にやったら使えないわけだ。」


 強い怒りや憎しみを抱くと、心の中に巣食う何かがブレスオブディザスターを使えと訴えかけてくる。以前レッドドラゴンにドーナが攻撃されそうになった時もそうだった。


 このブレスオブディザスターを発動する条件……それが強い怒りなどの負の感情を抱くということなのだ。


「お前、その腕輪でランのことも支配しようとしていたのか?」


「っ!!な、何のことだ?」


「隠しても無駄だ、もうその腕輪の正体はわかってる。」


「くっ、この腕輪には鑑定は使えないはずなのに……。秘密を知ったお前にはここで消えてもらわないとなぁッ!!」


 確信犯だ、こいつは絶対に許さん。


 明確な殺意を持って振り下ろされたその剣を、今度は赤黒いオーラを纏った手で受け止めた。すると、赤黒いオーラは男が剣を握っている右腕ごと飲み込み跡形もなく消し去った。


「えっ?あっ、あああぁぁぁァァ!?ぼっ、ぼくの腕があぁぁぁぁ!!」


 男は突如無くなった右腕を押さえて絶叫する。静寂が包んでいた闘技場に男の悲鳴が響き渡る。


「うあぁぁぁぁぁぁ!!か、返せよ、僕の右手返せよぉぉぉぉ!!」


「じゃあお前は今まで奪った彼女たちの時間を返せるのか?」


 絶対にできないことを男に問いかけてやると、男は黙りこくってこちらを睨みつけてくるだけだった。


「できないよな?」


「ぐっ……。」


「おそらく、彼女たちのことは言葉巧みにその腕輪を着けさせたんだろ?ステータス的にもお前じゃ勝てないだろうからな。」


 図星だ。こちらの言葉に男は何一つ言い返せない。


「お前自身の手で彼女たちを解放してやるつもりはないのか?」


「はっ、そんなことできるわけないだろう。僕は腕輪の解除方法なんて知らない。つまり彼女たちはずっと僕の奴隷として過ごすしかないわけさ!!」


 威勢よくそう言い放った男……。その下種さには呆れてしまうが、生憎コイツの思い通りにさせるつもりは毛頭ない。


「ひとまず黙っていてもらおうか。」


「うぐっ……。」


 男の腹部に拳を叩き込み、男を気絶させる。地面に男が倒れ伏したのち、俺はミースに声をかけた。


 

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