夢の中で見たもの


 イリスから今の状況を教えてもらいながら、今後の動きを考えていた最中、俺はもう一つ大事なことを思い出す。


「そういえば、夢の中でチュートリアルで見た妙なヒビをまた見たんだ。」


「何が映っていましたか?」


「獣人族が襲われていた。かなり凄惨な光景だったよ。」


「ふむ……私が作り出したものではないので、正確なことは言えませんが。それがもしこの世界で本当に起こっていることを映し出していたとしたら……少々事態は急を要するかもしれませんね。」


「確かめるには獣人族のところに行くしか無いよな。」


「えぇ、ですがそれには大きな問題がありますね。」


「大きな問題?」


「はい、今三種族の境界線は巨大な壁によって別け隔てられていて、外から中に入ることも中から出ることも大変困難なのです。」


「そういうことか。…………ん?でもちょっと待てよ?」


 俺は眠っているシアに視線を向けた。


「そんなものがあるなら、どうしてシアは外に出られたんだ?」


 シアは単身で人間の領地まで来ている。そんな種族間を別け隔てるものがあるなら、シアはここには来れないはず……。

 何か抜け道のようなものでもあるのだろうか?


「こればかりは後でシアに聞いてみないとな。」


 そしてイリスと話し込んでいると、窓から朝日が差し込んできた。


「話してたら朝になったか。」


「たくさんお話しましたからね。」


 差し込んでくる朝日を眺めていると、俺はふとあることが気になりイリスに尋ねた。


「そういえば、俺が眠っていた間……みんなご飯はどうしてたんだ?」


「誰も食べていません。皆さんヒイラギさんのことを心配してそれどころではなかったようですから……。」


 何て事だ……それなら余程お腹が空いているはずだ。たくさん作らないとな。


 料理の事について考えていると、イリスがこちらを眺めてクスクスと笑っていた。


「ふふっ、やっぱりヒイラギさんは料理の事を考えているときが1番楽しそうですね。」


「料理を作るのが生き甲斐なもんでな。」


 痛みの走る体に鞭を打ち、コックコートに着替えるとキュッと前掛けを締めた。


「さぁ作るぞ。」


 まずは時間のかかるサラダから仕込んでいこう。


「まずはじゃがいもを洗って、水をはった鍋に入れていく。」


 今から作るのはポテトサラダだ。


 たっぷりの水を入れた鍋でじゃがいもを茹でていく。串を刺して中までスッと入れば火が通った証だ。

 この時ポコポコと静かに沸騰する位の温度でゆでてあげると男爵芋でも崩れにくい。


「よし、火は入った。」


 じゃがいもに火が入ったら取り出して、熱いうちに皮を剥いて潰す。


「後は塩、胡椒できっちり味をつけて冷ます。」


 まだ温かいうちに塩、胡椒できっちりと味をつける。塩加減の目安は、そのままじゃがいもを食べて美味しく感じるまで塩をいれるといい。

 味をバッチリと決めたら、しっかりと冷ます。


「最後にマヨネーズで味をつけて完成だ。」


 マヨネーズは冷めてからいれないと油が分離してしまい、べちゃっとなってしまうので注意だ。


「付け合わせにトマトとキュウリ、レタスを添えて後は冷蔵庫に入れておこう。」


 でき上がったポテトサラダを冷蔵庫にしまい、次の料理に取りかかる。

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