シュベールでの外食


 再び関所を通って、シュベールの街の中へ帰って来た。


「そろそろ昼飯時だな。」


「お昼ごはん!!」


「あら、もうそんな時間かしら?」


「釣りってのはいっつも時間を忘れちまうんだよねぇ。」


 ドーナの言う通り、釣りは時間を忘れがちだ。日本にいたときは、子供の頃よく朝から夕方まで釣りをしてたものだ。


「さてと、どこでご飯を食べようか。」


「えっ!?お兄さんが作るんじゃないの!?」


 表情を凍りつかせながらシアが驚いた。


「外食は勉強になるんだぞ〜?この地域でどんな料理が食べられているのか……。どんな食材が使われているのか……って手っ取り早く知れるんだ。」


「ん〜……違う人が作ったご飯食べれば、お兄さんがもっと美味しいご飯作れるようになるってこと?」


「あぁ、そういうことだ。」


「それじゃあ我慢するっ!!」


「ありがとう。」


 シアの頭を撫でてあげた、あいにく腕輪を着けているため耳を触ることはできないのが残念だ。


「ところで、みんなは何が食べたいとかあるか?」


「ワタシは美味しければなんでもいいわよ?」


「アタイもそんな感じ。」


「シアも!!」


 うむむ……美味しければなんでもいい…か。一番難しい答えだな。


 歩きながら吟味していると、1つの問題に気がついた。


「あ、グレイスの飯どうしようか。」


 流石に飲食店で食べさせるわけにはいかないだろう。一応ぬいぐるみっぽくシアが抱いているから、不審の目は向けられていないが……。

 よくよく、近くで見れば完全にワイバーンだからな。


「個室があれば大丈夫そうだが。」


 個室なら食べられるところを見られることもないだろうし。


「取りあえず、あのお店に入って聞いてみるか。」


 通りにあった1つの飲食店を見つけ入ってみることにした。


「すみません。」


「あっ!?いらっしゃいませ~!!何名様ですか?」


「四人なんだが、この店は個室ってあるかな?」


「ございますよ~、それでしたら2階へご案内します~。」


「四名様ご来店でーす!!」


「「「いらっしゃいませ!!」」」


 随分活気がある店だ。日本の居酒屋を思い出すな。


 そして、2階にある個室へと案内された。


「うん、ここなら大丈夫だな。」


 案内されたのは扉つきの個室で、閉めれば外から中の様子は見えない。ここならば問題なさそうだ。


「よかったです~、それではお先にお飲み物お伺いしますね。」


「シアは何がいい?」


「……お兄さん、これ読めない。」


 あぁ、そうだった。普段はスキルの言語理解のおかげで、難なく会話が成立しているが……シアはそのスキルを持っていないから、人間の言葉がわからないのだ。


 後で言語理解のついている宝玉を確保しておかないといけないな。


「あ~、それならこの果汁水を1つと……。」


「ワタシは紅茶でいいわ〜。」


「アタイも。」


「それじゃあ後は紅茶3つで。」


「かしこまりました~、ただいまお持ち致します。」


 そしてウェイトレスの人が扉を閉めて、飲み物を準備しに行った。


 さて、今のうちに食べるものを決めてしまおう。

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