水の街シュベール


 ガラガラと車輪が回り、シュベールへ向かって進むこと一時間ほどで、道の向こうに人の行列と街並みが見えた。


「おっ?そろそろ着きそうだな。グレイスご苦労様、今装備外すから小さくなってくれ。」


「了解っす~。」


 グレイスの装備をはずし小さくなってもらった。


「皆ここからは歩いていこう。」


「わかったわ~よっと!!」


「グレイス~おいで~♪」


「意外と早く着いたねぇ。」


 小さくなったグレイスをシアが抱き、皆が降りてくる。


 うん、グレイスはシアに抱かれてるとぬいぐるみにしか見えないな。これなら問題ないだろう。


 馬車から最後にミルタさんが降りてくると、向こうに見えるシュベールを眺めて言葉を漏らした。


「おぉ!!やはり馬よりも断然速いですな!!」


 ミルタさんはグレイスが引く馬車の速度に驚いていた。


 まぁ、馬車を引いているのは普通の馬ではないからな。


「それじゃあ行きましょうか。」


 マジックバッグに馬車をしまい歩き出した。


「ヒイラギさんはマジックバッグもお持ちなのですな。」


「えぇ、便利なので助かってますよ。」


 などなど、他愛ない会話を交わしながら関所を目指した。歩くこと10分程で関所の列の最後尾に並ぶことができた。


「あぁ、よかった。ヒイラギさん本当にありがとうございました。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。」


「しばらくシュベールにはいらっしゃるんですか?」


「えぇ、まぁそうですね。」


「それでは、もしお時間があればぜひ私の店にお越し下さい。その時は格別のサービスをもっておもてなしさせて頂きますので。」


「わかりました、ありがとうございます。そのうち時間を作って伺いますね。」


 そんな話をしていると、あっという間に俺達の番が回ってきた。


「あぁっ!!ミルタさんじゃないですか!!魔物に襲われたと聞いていましたが……ご無事だったんですね!!」


 門番の人がミルタさんを見るなり言った。どうやらミルタさんの顔は広いらしい。


「えぇ、何とか。こちらの方々に助けてもらいましてな。」


「なるほど、ミルタさんが無事だったと上に報告しておきますね。そちらの方々もミルタさんを助けていただき、ありがとうございます。」


 と、門番の人がこちらに頭を下げてきた。


「困っている人を助けただけです。あと、これみんな分のステータスカードです。」


 門番の人に全員分のステータスカードを手渡した。


「はい、確かに確認しました。それではどうぞお入りください。」


 そして、旅を始めてから丸一日弱……。とうとうシュベールの街の中に入ることができた。


「おぉ、キレイな街並みだ。」


 街の中には水路があり、その周りには緑が生い茂っている。


「ヒイラギさんは、この街に来るのは初めてですかな?とてもきれいで良い街でしょう?」


「えぇ、驚きました。」


「初めて来る人は、ほとんどこの街の美しさに見惚れてしまうんですよ。さてそれでは、私は一度店に戻って色々処理をしてきます。この度は本当にありがとうございました。このご恩は必ずお返し致します!!」


「あはは、そんなに気負わなくて大丈夫ですよ。」


「いえいえ、この恩はとても大きいものですから。それでは……必ずまた。」


 そしてミルタさんは人混みの中に消えていった。


 ある程度落ち着いたら、あの人のお店を訪ねてみよう。行商人ってぐらいだから、きっと何か新しい発見があるはずだ。


「さてっと、みんな馬車に揺られて疲れてないか?」


「シアは大丈夫!!」


「ワタシも大丈夫よ?」


「アタイも。」


「自分も大丈夫っす!!」


 みんな元気だな、すこしぐらい疲れがあるかと思ったが……。

 せっかくだし、それなら少しこの街を観光してみようか。


「それじゃあこの街を少し観光してみようか。」


「うん!!」


「いいわね、面白そう。」


「この街は観光名所が多いからねぇ。退屈はしないと思うよ。」


 そしてこの街を知っているドーナに案内されて、水の街シュベールの観光と洒落込むのだった。

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