自分メスっす…


「自分っす。」


 …………は!?


 よ~し、それじゃあ名付けは無理だ。これ以上自分の周りを荒らされると本気で困る。


「あー、自分から言っておいてあれだが。俺が名付けるのはちょっと無理だな。すまん。」


「そ、そんなぁ~。」


 このワイバーンは凄い勢いで落ち込んでいるが、こればっかりは仕方の無いことなのだ。許してくれ。


「あんたの名前はワタシ達が考えてあげるわ!!それで我慢しなさい!!」


「これ以上ヒイラギに余計なハエがまとわりついても困るしねぇ。」


「ドラゴンさんのおなまえ~♪」


 あの~なんかヒートアップしてないですか?ドーナは何かオーラが黒いぞ?


 シアはなんだかんだ楽しんでいるようだが……。


 そうして三人で数分話し合った結果、このワイバーンの名前が決定した。


「あんたの名前はよ!!いいわね?」


「は、はい……大丈夫っす。ぐすん。」


 グレイスと名前が決まったが、彼女は少し悲しそうだ。だが、こればかりは仕方のないことなんだ。


「それじゃあ、改めてよろしく頼むなグレイス。」


「はい、よろしくお願いするっす。」







 ランside


「さて、ここまで来れば人化を解いても大丈夫ね。」


 街からかなり離れたところで人化を解いて、元の姿へと戻る。


「やっぱり全部元通りになってるわ~。ヒイラギには感謝しなくちゃね♪」


 レッドドラゴンのやつにボロボロにされた翼も、焦げてた鱗もぜ~んぶ元通り。我ながらほれぼれしちゃうぐらい綺麗になったわ。


「さて、それじゃあ久しぶりにを狩りに行こうかしらね」


 翼を羽ばたかせ大空へ舞い上がり山脈を目指す。


「前はただお腹を満腹にするためだけに狩ってたけど、ヒイラギのあんなご飯を食べちゃったから、もうあんなの食べれないわ~。」


 すっごい血生臭いし、硬いし……なにより美味しくないもの。


 そして山脈に近づいていくと目的のものを発見する。


「あっいたいた♪……って、あら?あの子喋れるみたいね。」


 遥か上空から山脈を飛んでいるワイバーンの群れを発見し、その内の1体に知性がある個体を発見する。


「エルダーかしら?まぁいいわ。馬よりは役に立つでしょ♪」


 そして獲物をロックオンすると群れの前に急降下した。


「こ~んにちわ♪」


「うわわっ!!みんな逃げるっす~!!」


 その知性のあるワイバーンは、先頭にいたため逃げるのが遅れてしまった。


「安心しなさい、もうあなた達を食べる気はないわ。美味しくないもの。でもその代わり~、あなたは逃がさない。」


 尻尾を伸ばして、逃げようとする知性のあるワイバーンを拘束する。


「ぎゃあぁぁッ!!誰か助けて~っす~!!」


 助けを求めるワイバーンだが、すでに蜘蛛の子を散らしたようにワイバーンは居なくなっていた。ただただ意味のない悲鳴が木霊するだけ。


「うんうん、ワタシには圧倒的に及ばないけど、このぐらいの力があれば十分ね♪それじゃあ急いで帰らなきゃいけないから…飛ばすわよ~♪」


「ぎゃあぁぁぁぁッ!!」


 尻尾の先でバタバタと暴れているが、それを意に介さず羽ばたきヒイラギのいる街の森を目指した。


 そして森につくや否や、ロープでワイバーンを木にぐるぐる巻きに拘束する。


「まぁまぁ、これでいいわね。あ!そうそう、念のため言っておくけど~逃げたら……?」


「は、はいっす~……。」


 殺気をとんでもなくはらんだその言葉に、彼女はすっかり逃げる気がうせてしまった。このままおとなしくしておく事を心に誓う、後のグレイスなのであった。

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