異変の犯人
ドーナとランを下がらせ、1人通路の奥に広がる部屋へ入った。その瞬間先ほどまでとは比べ物にならないほどの異常な殺気が全身をびりびりと叩く。
その部屋の中央には無数の魔物の死体が積み重なっていて、その上に一匹の魔物が鎮座していた。その魔物の姿を見たドーナが背後から声を上げた。
「ヒイラギッ!!そいつはデモンだ!!」
「デモン……確か図鑑で見たなオーガの最上位種だったか。」
黒い肌、異常なまでに膨れ上がった筋肉、悪魔のように捻れた角、凶悪な鋭い牙……見てくれからして強そうだ。
部屋の中に入ってきた俺のことを敵として認識したデモンは、スッ……と独自の構えをとった。
「構えた……か。こいつは一筋縄じゃいかなそうだな。」
デモンが構えたのを見てこちらも構える。攻撃的なデモンの構えに対して流しの構えをとった。その瞬間、目の前からデモンの姿が掻き消え、眼前に黒く大きな拳が迫ってくる。
「凄い力だなっと。」
放たれた拳を左手で弾き一歩間合いを詰める。たったそれだけの動作で、顎の下に潜り込むことができた。
「フッ!!」
そして顎に向けて撃ち抜くように掌底を放つ。その衝撃でデモンの体が少し宙に浮いた。
「そこだっ!」
顔には手が届かないので、首に手を置いて地面に叩きつけようとしたが、デモンは自分で体を回転させ、逆落としの最中で抜け出されてしまった。
「おぉ、やるな。なら今度はこっちから攻めさせてもらおうか。」
縮地で間合いを詰め水月へ打突を放った。確かに拳は水月を捉えたが……。
「ん?硬いな。」
デモンの筋肉の鎧は硬く、大したダメージにはならなかったようだ。そしてデモンはこっちの攻撃力を把握して、余裕ができたのか…迷いなく攻め立ててくる。
さてどうするか、デモンの攻撃は威力こそ凄まじいが直線的だから読みやすい。故に大した驚異ではないが、こちらの攻撃が通らないとなると話は別なんだよな。
「仕方ない関節を破壊するか。」
そしてデモンから放たれた拳に向かって、俺は真っ直ぐに掌底を当てた。するとボクン……という生々しい音が部屋の中に響き渡る。
「これでもう右腕は使えないだろ?」
真っ直ぐの力の押し合いの負荷に耐えきれなかったデモンの肘が折れ曲がり、明後日の方向を向いていた。
「ガアァァァ!!」
自身の腕をへし折られデモンが激昂する。怒りで我を忘れたのか構えを捨て、ただただ殴りかかってくる。この時点で勝敗は決まったようなものだ。
勝負事で怒るのは良くあること……だが怒りが沸いたとしても理性を保ち続けなければならない。理性を失った拳は最早素人の拳同然だ。
「これなら効くだろ?」
放たれたデモンの拳を左手で引っ張り、水月の下から肋骨の内側を狙うように膝蹴りを叩き込んだ。
デモンの推進力と俺の力を上乗せした膝は、深く肋骨の内側にめり込みデモンの内臓に甚大なダメージを与えたようだ。
「ゴガァッ、ゴブァ……。」
デモンの口から出血が止まらない。もう少しすれば肺に血が溜まり窒息するだろう。それからすぐに苦悶の表情を浮かべてデモンは倒れた。
血溜まりの上に倒れているデモンの隣に黒い宝石が落ちている。
「宝玉か。」
デモンの宝玉を拾い上げ、後ろで待機していたドーナ達へ声をかけた。
「終わったぞ。」
その声に、待ってましたと言わんばかりにドーナ達がこっちに駆け寄ってきた。
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