ダンジョンへ


 俺たちはドーナに連れられて、ギルドまでやって来た。そしてドーナは受付に歩いて行くと、一人の受付嬢に話しかけた。


「ミースはいるかい?」


 そうドーナが問いかけると、パタパタとその受付嬢が走って2階に上がっていった。それから少しするとミースが2階から降りてきた。


「皆さんおはようございます!!今日はどんなご用件ですか?」


「ミース開けてくれないかい?」


「えっ!?まさか行くんですか!?」


 驚くミースにドーナがこちらの事情を説明する。


「今後のために、ちょっとまとまった金が必要になってねぇ。」


「なるほど、そういうことでしたか……わかりました。着いてきて下さい。」


 事情を察してくれたミースの後についていき、ギルドの地下闘技場の更に下へと続く階段を下っていく。

 階段を下り終えると、やけに開けた場所に出た。その場所にはとても大きな物々しい扉がある。


「随分大きな扉だな。」


「ここがダンジョンの入り口です。」


 近づいてみてわかるのだが、扉はとても大きく3m近くある。いったい何が入ることを想定しているのだろうか?


 そんな素朴な疑問を抱いているとミースが話し始める。


「ドーナさんから聞いていると思いますが、一応説明しますね。ここのダンジョンの魔物は特殊で、非常に強い魔物しか出てきません。ですから、命の危険を感じたらすぐ引き返してください。ダンジョン内の魔物は、こちらには出てこれませんから。」


 ミースはいつもの活気溢れる言動ではなく、真剣な面持ちで説明してくれた。


「大丈夫だ。今回はシアもいるから、ヤバい気配を感じたらすぐ逃げるよ。」


「お願いします。」


「それじゃあ行こうか。」


 俺が大きな扉の前に立つと、自然と扉が開いてこちらを招き入れる。そしてみんなで足なみをそろえて中へと踏み入ると後ろの扉が閉まり、目の前に枝分かれした複雑な道が現れた。


 入ったダンジョンの中はまるで迷路のようで、行き止まりや死に至るような凶悪なヤバいトラップがそこかしこに仕掛けられていた。

 そんな迷路のようなダンジョンを攻略している最中、ふと疑問に思ったことがあったのでドーナに問いかけてみることにした。


「なぁ、ドーナこの迷路の中は魔物って出てこないのか?」


「いや、いつもならもう出てきててもおかしくないんだけど……。」


 ドーナ曰く、いつもなら行き止まりの先とかにはトラップのように魔物がいるらしいのだが、今回は姿すら見えない。


「シア、マジックバッグの中に入っててくれるか?少しダンジョンの様子がおかしいから、危ない気がするんだ。」


「うん!!わかった!!」


 何か嫌な予感がした俺は、シアにマジックバッグの中に入ってもらうように促した。すると素直にシアは言うことを聞き、スポッと中に隠れてくれた。


 それからしばらく進むと、道端にたくさんの魔物の死骸を発見する。それを見たドーナが訝しげに死骸を観察し始めた。


「おかしいねぇ、魔物同士で戦う事はあるけど……こんなにたくさんの魔物が争ってたことなんて今までないよ。」


「しかも、この殺し方食べるためじゃないわね。ただ、ひたすらに殺しただけって感じがするわ。」


 冷静に現場を分析する二人。何やら厄介なものが待ち受けてそうだな…と一歩足を進めたその時……。


「……っ!!二人とも下がってくれ。どうやらこの先にいるみたいだ。」


 シアが入っているバッグを二人に預け、俺はこの大量虐殺の犯人であろう魔物と対峙するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る