舞い降りた災厄


 外でドオォン!!という大きな音がした。その衝撃波でハウスキットがぎしぎしと音を立てる。なにやらただ事ではなさそうだ。


 一度外へ出て安全を確認してきたほうがよさそうだな。


「シア、絶対にここから出るなよ?ちょっと外の様子を見てくるからな。」


 びっくりして縮こまっているシアにそう声をかけた。


「う、うん。ヒイラギお兄さんも気を付けてね?」


「あぁ、もちろんだ。」


 戻ってくるとシアと約束をして、俺は音がした外のほうへと向かう。


「これは……。」


 今の衝撃波のせいだろうか、オーリオの木が薙ぎ倒されている。いったい何が起こったんだ?


 ……その答えは空から舞い降りてきた。


 風圧により舞い上がった土埃の中から姿を現したのは、どこまでも蒼く澄んだ鱗に身を包んだドラゴン。

 その美しさに一瞬見とれそうになるが、俺はある違和感に気付いた。


(このドラゴンなんでこんなにボロボロなんだ?)


 そう、蒼いドラゴンは体中ボロボロになり、いたるところから出血していた。警戒しながら蒼いドラゴンを観察していると、不意にドラゴンが口を開いた。


「不味い、ブレスか!?」


 カオスドラゴンとの戦いで喰らったアレが頭をよぎり、すぐさま構えるが、その蒼いドラゴンは一向にブレスを撃ってくる気配がない。


 その代わり、か弱い声で俺に助けを求めてきた。


「たす……けて。」


「……わかった、いったんこの中に入ってくれ。」


 このドラゴンに敵意がないと判断した俺は、提げていたマジックバッグを広げた。すると言葉が通じたらしく、蒼いドラゴンは中に入っていった。


 その次の瞬間、さっきまで蒼いドラゴンがいた場所に上空から火球が降り注いだ。そしてさらにもう一匹、今度は真っ赤な鱗のドラゴンが現れたのだ。


「オイ、人間。貴様アイツをどこへやった?」


 先ほどの蒼いドラゴンとは打って変わり、この赤いドラゴンはとても攻撃的な口調で俺に話しかけてきた。


「残念だが教えてやれないな。」


「劣等種族がいきがりやがって、灰にしてやる。」


 その言葉の後赤いドラゴンは口を開け、今度こそブレスの構えをとった。


「させるわけないだろ。」


 ブレスを吐かれる前に縮地で間合いを詰め、赤いドラゴンの下顎を蹴りあげる。するとドラゴンの口で火球が爆ぜた。

 しかし、カオスドラゴンの時のようにドラゴンの体ごと爆発することはなく、口から黒い煙を吐きながら、こちらに怒りのこもった視線を向けてくる。


「劣等種族があぁぁぁ!!」


 懐にいる俺へ向けて、右の前足から鋭い爪の一撃が繰り出された。その攻撃を後ろに体重を預け飛び退いて避ける。


 バックステップで下がりながらドラゴンを観察してみると、口で火球が爆ぜた時の火傷の痕がもうない。どうやらこいつもスキルを持っているらしい。


 ちょっと面倒な相手だな。


「そう簡単にはいかない……か。」


 どうやってこいつを攻略しようか悩んでいると……。


「ヒイラギッ!!」


 突然後ろからドーナの声が聞こえた。


 それと同時に、目の前のドラゴンが不気味な笑みをうかべ、ドーナの方へと視線を向けた。

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