ふたりで夕食
出来上がったカグロのたたき定食を持ってシアのもとへと向かう。
「さぁ、シアできたぞ。」
「ふわ……すごくいい匂い!!」
「今日はシアの好きな魚の料理だ。たくさん食べていいからな?」
「やったぁ!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて全身で喜びを表しているシアの傍らで、俺は箸と料理をテーブルに並べる。そして二人で向かい合うようにして席に着いた。
するとシアが不思議な顔をして箸を見つめていた。
「ヒイラギお兄さん、これどうやって使うの?」
「あ~、そっか…初めてだと使いにくいかもなフォーク持ってこようか?」
そうシアに提案するが、シアはぶんぶんと首を横に振った。
「シア、ヒイラギお兄さんと一緒がいいっ!!」
意外にもシアは箸が使いたいらしく、箸の使い方を俺にせがんできた。まぁ、慣れれば使いやすいものだし、教えてみようか。
「わかった、それじゃあまずこう持ってな。」
そうしてシアに箸の使い方を教えること数分で、驚くことにシアは箸の扱い方をマスターしてしまった。
「お兄さん!!できたよ!!」
すいすいと箸を扱えるようになったシアは、豆のように掴みにくいものでも簡単に掴んで見せた。子供は物覚えがいいというが、流石にこれは覚えが早すぎる。
「おぉ、そうそう上手だ。」
少し驚きながらシアのことを褒めていると、不意にシアはこちらに頭を差し出してきた。
「お兄さん!!頭なでて?」
シアの望み通りに頭を撫でてあげた。すると尻尾をゆらゆらと振りながら表情がとろけ始める。
「えへへぇ~、やっぱり気持ちいい~♪」
かわいいなまったく。
さて、そろそろ食べないとご飯が冷めてしまう。もう少し撫でていたい気持ちはあるが、冷めたご飯を食べるのはごめんだ。
「さぁ、冷める前に食べよう。」
「うん!!」
「それじゃあいただきます。」
「いただきま~す!!」
二人でいただきますと挨拶をした。
さて、じゃあ食べてみよう。カグロのたたきを一切れと、少しの薬味を箸でつかみ特製のタレにつける。すると脂がじゅわっとタレの中に染み出した。
下ろしている時にも感じていたがすごい脂がのっているな。そしてタレにつけたカグロに薬味をたくさん乗せて、口にほおばった。
「ん~~~っ、これはうまいっ!!」
味はまさにカツオなのだが、脂の甘味、旨味がマグロみたいだ。言うなれば両方のいいところを合わせた感じになっている。
さらに、タレのニンニクの風味が更に食欲を誘い、薬味がいいアクセントになっている。これだといくらでも食べられそうだ。
「えと、これをこーして、これにつけて~あむっ!!」
シアも俺の食べ方を真似して食べ始めた。
「んん~っ!!おいひぃ~お兄さん、これすごい美味しいの!!こんなに美味しいの食べたことないっ!!」
カグロのたたきを食べたシアは、まさにほっぺを落としそうになってしまっていた。
彼女は獣人の国で差別されていたらしいから、ろくなものも食べさせてもらってなかったのかもしれない。
「これからは毎日美味しいの作ってあげるから、楽しみにしててくれ。」
俺ができることは料理を作ることこれだけだ。だが、それでシアが少しでも元気になってくれればそれでいい。
そしてシアと二人で美味しい夕食を楽しんだのだった。
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