チキンライス


 二人で夕食を済ませたあと、満腹になったシアが眠くなったらしいので、泊まり込みで仕込みをするときに使っていた布団を出した。


「ふわぁぁ、これふっかふかぁ。」


 シアは布団に入って毛布に包まれるとすぐに眠ってしまった。今日はいろんな事があったから疲れたんだろう。


 さてと、シアも寝たことだし始めるとするか。


 厨房に明かりをつけ、俺は一人黙々と作業を始めたのだった。




 そして朝日が昇ってくる頃、俺は厨房で椅子に座り肩で息をしながら盛り付け台に突っ伏していた。


「あ゛~…………もう朝か。」


 一人厨房で何をしていたのかというと、冷蔵庫や冷凍庫に合った余り物の食材を使って、ある程度料理を作り置きしておいたのだ。これから食べることに困らないようにな。

 作った料理はマジックバッグに入れておけば、温かいまま保存されるから、いつでも美味しく食べられる。


「シアの朝ご飯作らないと……。もうひと頑張りだ。」


 とは言ったものの、何を作ろうかな。子供が喜ぶものといえばなんだ?


 徹夜明けで妙に覚醒している頭を働かせ、シアが喜ぶようなメニューに思考を巡らせる。


「……オムライスなら喜んでくれるかな?」


 子供受けする定番といえばオムライスだろう。あれなら間違いないはずだ。


「さて、そうと決まればさっそくチキンライスから炊いていくか。」


 家庭的なチキンライスは鶏肉を炒めてご飯とケチャップを混ぜて終わりだが、実は炊いた方がとても美味しく、お店で食べるような本格的なものになるんだ。


「じゃあまずは玉ねぎと鶏肉を切ってしまおう。」


 玉ねぎは小さめの色紙切り、鶏肉は一口サイズより少し小さめに切っていく。


「鍋にバターを入れてっと。」


 バターで鶏肉と玉ねぎを炒める。十分に玉ねぎに火が入ったら洗っていない米を入れて炒める。米を洗わない理由は余計な水分を吸わせないためだ。


「そんで米をさわって、よし大丈夫だな。」


 炒めている米が手で触って熱い位になったらコンソメ、塩、ケチャップで味付けしたスープを入れる。

 ここで注意だが、スープは入れる直前に必ず沸騰させておくこと。


「後はオーブンで火を入れよう。」


 スープを入れたあと2分位火にかけ蓋をする。そして、150℃に余熱しておいたオーブンで30分じっくりと火を入れる。

 途中で一回中身をかき混ぜてあげると炊き上がりにムラが無くなる。


「よっし、30分経ったな。」


 30分経ったらオーブンから取り出し、蓋をしたまま10分程蒸らしておく。この炊くチキンライスは時間がかかる分、美味しさは比べ物にならない。


 そしてチキンライスが炊き上がる頃、シアが重たそうな瞼をこすりながら厨房へと入ってきた。


「ヒイラギお兄さんおはよぉ~。」


「おはようシア。あともう少しで朝ごはんができるから、あっちで座ってていいぞ?」


「うん~、待ってる。」


 ふわぁぁ~っと大きなあくびをしながら、シアはホールのほうへと歩いて行った。


「さて、ぱっぱと仕上げよう。」


 卵に粉チーズ、生クリーム、牛乳を加えた卵液を、バターを馴染ませたフライパンに流し込む。

 そうしたら鍋と手を両方動かし、手早く半熟の状態にする。後は手前から奥に卵を寄せ、手首を叩いてオムレツをひっくり返す。簡単に言ってるがコツを掴むのがなかなか難しい。


「そしたらチキンライスを盛った上にオムレツをのせて完成っと」


 ちなみにオムライスは俺の得意料理の一つだ。


 1年目の時に毎日卵を1ケース分使って何十個もオムレツを作って練習したからな。

 いや~、あれは食べるのが辛かった……まぁ、そんな話はさておきだ。


「さ、朝ご飯だ。」


 出来立てで、ふわっふわのオムライスをシアのいるテーブルへと運ぶのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る