女神イリスとの再会


 窓からまぶしい朝日が射し込み、目を覚ました。


「んんっ、もう朝か。」


 まだあまり回転しない頭で本日の予定を組み立てる。


「今日は一回教会に行って、あとオーリオの依頼できたらいいな。あぁ、時間が余れば市場も行ってみようか。」


 行きたいところも、やりたいこともたくさんあるがひとまず朝食を食べに行こう。


 重い瞼を擦りながら食堂に向かう。


 食堂にで席に着くと、運ばれてきたのはいたってシンプルな朝食だった。バターブレットと白パン、スクランブルエッグに野菜スープ。

 この世界はパンが主食なのだろうか?できれば朝は米が食べたいが、ないものねだりしても意味がないか。


「いただきます。」


 手を合わせ、食前の挨拶をしてから朝食を食べ始める。軽いものが多いから、食欲があまりない朝でも食べやすい。 


 そして提供された朝食を食べ終えた俺は、宿屋を後にして教会へと向かう。ちなみに教会は冒険者ギルドと同じぐらい主張している建物だからすぐにわかった。


 といってもまぁ、どデカい十字架が見えているだけだが……。


 その教会に着くと、さっそく神父が出迎えてくれた。


「ようこそいらっしゃいました。」


「女神イリスにお祈りをしたいんだが。」


「そうでしたか。最近はお祈りをする人も減ってきているので、女神イリスもきっとお喜びになるでしょう。」


 そう言って神父は教会の中へ案内してくれた。


「こちらが女神イリスの像です。お祈りはこちらでなさってください。」


 案内された教会の中にはとても慈愛に満ち溢れている女神像がある。俺も実際にイリスの顔を見たわけではないが、こんな感じなんだろうか。


「あぁ、ありがとう。」


 案内してくれた神父に感謝し、女神像の前で膝をつき祈った。すると、急に周りの景色が変わり正面から聞きなれた声が聞こえた。


「お待ちしておりましたよ?こちらで一緒にお茶でもいかがですか?」


 顔を上げて正面を見てみると、1人の女性がこちらを手招きしていた。導かれるがまま、その女性の正面の椅子に座る。


「そのご様子ですと、こちらの世界でもうまく生活できているようですね。」


「おかげさまでな、バックにお金を入れていてくれたおかげだ。ありがとう。」


「ふふっ、お役に立てたのなら何よりです。」


 こちらを向いてにっこりと微笑みながらイリスは言う。あの女神像より遥かに慈愛に満ち溢れているな。とてもじゃないが比べ物にならない。


「それでひとつ聞きたいことがあるんだ。」


 イリスに礼を告げた俺は、早速気になっていたことについて尋ねることにした。


「はい?なんでしょうか?」


「チュートリアルで見たヒビの隙間には、人間以外の種族もいたと思ったんだが、この街にいないだけなのか?」


「あなたが見た景色は今から100年ほど前の景色です。現在は獣人族、エルフはヒト……つまり人間と対立しています。」


 衝撃の事実だった。まさか対立しているとは、どおりで街で見ないわけだ。


「ちなみになにがあったんだ?」


 対立するからには何かしら理由があるはず。俺はイリスにそれを尋ねた。そしてイリスの口から出てきた言葉に自分の耳を疑うことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る