ドーナの面接
少し緊張しながら彼女の後ろを着いていくと、木でできた巨大な扉の部屋の前へと案内された。
「ここだよ。」
大きな扉を軽く開けた彼女に中に入るように促された。中に入ると執務用の大きな机と、接客用だろうか大きなソファーとテーブルがある。
「まぁ、そこのソファーに腰かけておくれ。」
テーブルをはさんで2つあるソファーに座るよう促された。ソファーに深く腰をおろすと、正面のソファーに彼女が腰を下ろした。
「いよっと、まぁまぁそんなに緊張することはないよ。アタイは
彼女は座ると自己紹介をしてくれた。
彼女がこのギルドの取締役らしいが、随分若く見える。俺とあんまり歳は変わらなさそうだ。
どうやら彼女の名はドーナと言うらしい。自己紹介をされたら返すのが礼儀だ。
「ヒイラギ クレハだ。」
名前だけだが俺も軽く自己紹介すると、彼女は少し驚いたように言った。
「へぇ、名字があるなんて珍しいねぇ。どこの生まれだい?」
その質問で俺は少し困ってしまう。
そういえばこの世界の地理のことをイリスに聞くのを忘れていたのだ。ま、とりあえず極東と言っておくか。
「極東にある小さな村の生まれだ。」
「ほぅ、極東ねぇ。あの辺は最近死の軍勢に襲われたって聞いたけど……そこの生き残りかい?」
またしても聞いたことのない言葉が出てきたな。俺は説明を求めるように彼女に聞き返した。
「死の軍勢?」
「ん?知らないのかい?最近暴れ始めてる厄介な連中だよ。最近突然現れたからあまり情報は多くないが、奴らが襲ったとこは草木一つ命が残らないから死の軍勢って呼ばれてる。」
ずいぶん物騒な連中だな。出くわしたくはない。
「おっと、少し話がそれたね。で、冒険者登録のことなんだが……。」
「その書類を記入すればいいんじゃ?」
俺は彼女が持っている紙を指差した。
「その通り、ってもまぁ名前とかそういうのを書くだけださ。それじゃ、ちゃちゃっと記入しておくれ。」
スッと差し出された紙に必要事項を記入していく、そして書き終えたものを彼女に手渡した。
「うんうん、しっかりと全部記入してあるねぇ。じゃあこれで書類は完了っと、次は
「
「冒険者ってのは危険と隣り合わせさ。だからあらかじめどのぐらいの実力を持ってるのか、測っておく必要があるんだよ。」
俺はドーナから冒険者のことについて少し説明を受けた。
彼女曰くどうやら冒険者にはランクがあるらしい。話を聞いたところ一番下から銅、銀、金……最もランクの高いのが白金級となっているようだ。
実技試験でいい結果を残せれば飛び級をすることもできるとか、なんとか。
簡単な説明をしてくれた後、俺は彼女にある質問を投げかけられた。
「実技試験の前に一つ聞きたいんだけど、ここに記入してあるレベル……
ドーナは書類のレベルの項目を指でつつきながらこちらに問いかけてきた。
「間違いなく本当だ。」
「ほ~、レベル2でヘッジの攻撃を指一本で止めるかい。一応あいつはこのギルドじゃ、まぁまぁレベル高い方だったんだけどねぇ。」
そう呟きながらドーナはじっと俺の目を真っ直ぐに見つめてきた。その口元は獰猛に笑っている。
「ヒイラギ……あんた何者だい?」
「そこに書いてある通り、ただのレベル2の人間だ。」
「そうかいそうかい、まぁ今はそれでいいよ。それじゃあ地下の闘技場に行こうか?そこが実技試験の会場なんだ。」
ドーナはソファーから立ち上がり言った。
「地下にそんなものまであるのか?」
「いつもは冒険者達の練習場になってるけどねぇ、アタイが一声掛ければすぐに空くさ。」
そう言ってドーナは歩きだしたので俺もそれに着いていく。その時、歩きながら彼女が不敵な笑みを浮かべていることに気付くことができなかった。
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