眼を覚ますとそこは… その1
おや、ふかふかしてる、どこに寝てるんだ。
あれ、私ベッドに横になってる?
さっきまでなにしてたんだっけ?
頭がすごく重く感じる。
ここはどこなんだろう?
ピコーンピコーン………
なんの音だろう、わからない。
鉄ちゃんはもう起きたかな、いつもの挨拶しにいかなくっちゃ………
ママの声優しかったなぁ、また聞きたい。
そうだ、ふーせんママにも朝の挨拶しなくっちゃ、朝ごはんなんだろう。
あーお腹すいた。
あれ、私はママのパソコンチェアーの上に座っていたんじゃ………あれれ。
ゆっくり目を開けてみる。
あまり高くない天井に、暖かい光を放つ照明が点いている。常夜灯みたい。
どこだここ?
「眼を覚ましましたね、おはよう」
えつ! ママの声だ!
ガバっ!
私はベッドに上半身を起こした。
「ママ、ママなの? 」
大声で叫んだ。
うん?
「私はルナです」
「なーんだ、ルナか、おはよう」
私はちょっと落胆した。
「ごめんなさい、月夜姫が悲しむなら、音声波形をチェンジしますが………どうします? 」
「今のままがいい」
「分かりました。それより、どこか痛いところはありませんか? 」
「ないよ、頭が重く感じるだけ、相当な知識が入ったからね」
「気分はどうですか? 」
「悪くない」
「体は痛いところないですか? 」
「大丈夫」
「お腹すいてないですか? 」
「すっごいすいた」
「じゃあ、月夜姫の大好きなハンバーグと、あさりの味噌汁でも作りましょう、ポテトサラダもつけて………」
「ステーキも食べたい! 」
「まあ、いっぱい食べますね。分かりました。少し待ってください」
「くすくす」
私は笑った。
「どうしました、何かおかしかったですか? 」
ルナがちょっと不安そうなトーンで言った。
「だってー本当のお母さんみたいんだもの、ふーせんママと話してるみたいだった」
「ママ、ですか? 」
「うん、とっても優しいお母さん」
「………」
「どうしたのルナ? 」
「いえ月夜姫」
「なあに? 」
「お母さんってこんな感じなんですか? 」
「そっか、ルナにはお母さんがいないものね、でもね私の優しいお母さんだ。お母さんっていつも子どもが心配で、時にはうざったくなって怒り出したりするけどね」
「………」
「私も本当のお母さんに会った事ないけど、ふーせんママが『私はみんなが本当の子どもだと思ってます。特別扱いは致しません』って言ってね、愛してくれたから、なんとなくわかる」
「愛ですか………」
ルナはトーンが下がった、何やら計算するか、データベースと照らし合わせているようだ。
「うん、何が愛って言われると難しいけど、心配するのも怒るのも、ほっぺにキスするのも愛なんだって、時には憎んだり、喜んだり、泣いたり、ぜーんぶ愛なんだって、面白いよね」
「難しいですね」
「あはは、考えるとなんだかめちゃくちゃだぁ」
「あっ」
「どうしたの? 」
「私の回路が少し成長しました。お母さんって何かを学習した結果です」
「すごーい」
「ちょとまってて下さいね、お料理を作りましょうね」
「そうそうお料理作るのも愛を込めて作ると美味しいそうだよ」
「愛………ですか」
「ルナの料理楽しみに待ってるよ、ご飯も炊いてね」
「はい」
そういうとルナの音声は途切れた。
「くっくっくっ………」
「あっ翁じい、聞いてたな」
「だってこんなに傍にいるんですから、嫌でも聞こえます」
と、あの白い車の運転席で、操縦している後ろ姿が見えた。
「あのルナが、たじたじですね」
「悪いことしたかしら」
「いえいえ、相手はどんなに優秀でも人工知能ですから」
「でも、感情もあるし、人間より人間らしいわ」
「確かにそうでございます。そのようにアウトプットするよう作られております」
「ところで翁じい、私は車に乗ってるの? 」
「そうです、リムジンタイプに変形してベッドを出しています、地下200メートルのラボから、ルナの操る端末ロボットで車まで運んでもらいました」
「なるほど、で、ルナはどこで料理するの? 」
「トランクが冷蔵庫になっていまして、その横に調理マシンが設置されているようです」
「へー」
「二人だと一カ月は、毎日三食食べらるくらいの食材が入る冷蔵庫になってます」
かぐや一族なら出来るかも、もう、あんまり驚かない。
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