植物コンピュータ その3

「凄っ、じゃあもう人間だ」

「いえ、所詮私は入出力回路と一体でないと機能しません、そういう意味では、独立電源で電力を供給しているソーラーパネルや風力発電、地熱発電が壊れると、壊れてしまいます」

「でも人間の脳みそと同じような仕組みなんでしょう」

「今では能力だけ見れは人間の遥か先をいっております」

「それなら人間と言えなくても、一種の新しい生物じゃないの」


「いえ、生物とは違います」


「どうして? 」


「いわゆる死生観の根本をなす、魂がありません、魂という存在は知識として持っていますが、全く理解ができません。それは生命体ではない事を意味しています」

「魂………難しい」

「はい、難しいですね」

 ルナの声は優しかった。

「月夜姫、その代わり私には睡眠が必要ありません、必要な時は二十四時間いつでも呼び出して下さい」

「うん、よろしくね」

「では、お疲れとは思いますが、もう一つ今日中にやっておかなければならない事があります」

「それってかぐや語の本を読むこと? 」

「そうです、ラボの作業台の上にお出しておきましたので、お読み下さい」

「分かった行ってみる、あ、そうだ。その本を元にして『肉体改造装置』と『魂の注入装置』を設計したのもルナなの? 」

「『肉体改造装置』はその本にある基礎理論を元にして私が設計し、遠隔操作できるロボットアームで組み立てました。

 いま地球でも万能細胞が科学の最先端の技術として、もてはやされれていますが、かぐや一族は随分前にその技術を開発して私にデータを引き継ぎました。

 だって私は植物コンピュータです。研究の基礎となった植物が持つ万能細胞を解析して、それを元にどうやったら肉体の老化を防げるのが計算させるのに最も都合が良かったからです。

 つまり自分の細胞を研究して、その結果を元に機械を作ればいいんですから」

「理に叶ってる」

「そうです。しかし問題は『魂の注入装置』です」

「………」

「生き物が生き物でいるためには魂が必要です、それは、どんな生き物でも同じです。それを肉体との結びつきを強め、引き止めるための装置ですが、私には魂が理解ができない、つまり、設計などできないのです。

 開発された全ての知識を持っている女王様の一族、つまり、かぐや姫の末裔たちが設計、開発にあたっていました。

 月夜姫のお母さんやおばあさんたちですね。

 知識を遺伝子に組み込む能力は、女王様の家系しか持っていませんでしたから」


「えーっ、そうなんだ。それを私が受け継いでいるの? 」


「はい」


「『魂の注入装置』はまだ完成していないの? 」

「いいえ両方とももう機械としては完成しています、お母様が最後の仕上げをなさいました。ですが………」


「なに? 」


「動かすには特殊な物質が必要です」


「特殊? ってなにがいるの? 」


「今はまだ申し上げられません」


「そうっか、知識の封印が解けないとわからないんだね」

「おっしゃる通りです」

「わかったよやってみる」

「素直で賢くて綺麗な姫さまに成長いたしましたね、私も大変嬉しいです。ふーせんママに感謝しなくちゃね」

「あはは! ふーせんママまで知っているんだ」

「うふふ、もちろん、とっても素敵なお姫様」

「テヘヘ、そう? 」

 私はちょっと照れた。

「はい」

「またここに来てもいい? 」

「もちろんです、いつでもおいでください」

「うん」

 と、私が離れようとした時、再びルナの声がした。


「私の本体はここにありますが、いつでも傍におりますことをどうかお忘れなく。翁じいと共に最大限の協力を誓います」


「ありがとう! すっごく嬉しい! 」


 私は笑顔になった。

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