幕間
幕間 2
けたたましく鳴り響く万能ツールであるヤオヨロズを耳に当てた寝ぼけ眼の亜由美の耳に刺々しい少女の言葉が突き刺さる。
「あんた寝てたでしょ!?」
「ふぃ~?」
「ふぃ~?じゃない!緊急事態よ!あんたの友達……名前なんだっけ?ああ、もういいや、とにかく持山町の○○丁目付近に異常反応発生したの!」
「状況は!?」
布団から飛び起きた亜由美は一階の自分の部屋から庭に飛び出し屋根に飛び上がって眼帯を外す。外気に晒された魔眼を誠の家の方へ向けると小さく呻く。
「何よ、あれ?空間侵食?異界生成?」
何が起きているのか、普通に日常を生きている人たちには認識さえされていないだろう。
だが、今まさに世界は喰われていた。
持山町の一角が底なし沼に引きずり込まれるようにゆっくりと沈んでいく。
「
「観測班からの状況推測が今上がったわ。あの地域一帯が喰らうモノの巣に引きずり込まれているみたいよ。橘くんと真白が阻止しようとしているけど無理でしょうね。大分力を削いだつもりだったけどまだあんな事を出来るなんて」
「誠くん達やあそこにいる人は!?」
「一緒に飲み込まれた。飛ばしていたドローンも機能停止したわ。幻視特性のない人は何も分からないまま固まっちゃったでしょうね。アダムが彼のパソコンをハッキングして連絡をとったけどすぐに切れたって。その人の家周辺が中心点で一気に飲み込まれたそうよ。そして今も少しずつ範囲を広げていっている」
「……アレを潰す方法は?」
「いつも通りよ。敵の懐に飛び込んで頭を討つ……って、早まるんじゃないわよ!今こっちも準備して……」
「これは私のミス。アイツらの力を見くびっていた私のせい。状況を見守るなんて悠長な事を言っていないで強引にでも接触するべきだった!だから私が助けないと!」
「だからって一人で行くんじゃないわよ!」
「一人じゃないですよ」
二人の言い争いに割って入ったのはまだ幼さを残す女の子の声だった。そこにもう一人低い男の声が続く。
「三人だ。十人隊長に空戦のエースがいるんだ。先行部隊としては十分な戦力だろう?」
「りっくん、シロちゃん……」
「りっくんはやめろ」
「でも……」
『いいよ、行ってこい!』
渋る美優を抑え、また別の青年の声が亜由美たちの背を押す。
「ボス……」
「ただし無理はするな。無理そうならすぐに戻れ。戻れそうにないなら死に物狂いで生き残れ。いいな?」
「了解です!りっくん、シロちゃん、合流するよ!」
亜由美は家の中へ駆け戻り脱ぎっぱなしにしていた愛用のコートを引っ掴み玄関から飛び出していった。
目指すは災厄の中心。そこにいる友達とまだ見ぬ隣人を救うべく亜由美は慣れ親しんだ街を風のように駆け抜ける。
(絶対に、絶対に私が助けて見せる!)
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