第17話 どうやらエルフの村を探す様です。
2、3日は大人しくしていたサテランティスだったが、一週間も経つと元気を取り戻したのか、オレやマイケル兄さんに食っ付いて色々と話しかけて来た。マイケル兄さんは真面目に忙しいから、基本的にはオレの後ろをちょ細か食っ付いてる。
オレが仕事を終えたタマをモフモフしているとサテランティスは話し掛けて来る。
「我にもそれをやらせて欲しいのじゃ」
「モフモフするか?タマ、どうする?」
オレが聞くとタマはサテランティスをじっと見てからゆっくりと彼女の方に向かった。サテランティスは嬉しそうにモフモフしている。
「アレスの猫は変わった猫なのじゃな」
「ああ、タマは超古代文明で造られた超魔道生物の試作機だからね」
「超古代文明??猫じゃ無いのか?」
「古代シャミール人の文明だよ。タマはシャミール人の魔導具学者に造られたんだよ。モチーフは猫だけど強いんだぞ」
「古代シャミール??確か【終焉の十日間】で六魔竜に滅ぼされたと聞いてるぞ」
「ほう、知っていたか。そうか、魔女の国にも伝わっていたのか。しかし、六魔竜って事になってるんだね…」
「そうじゃ、『大魔王サターンによって遣わされし六魔竜が傲慢で愚かなシャミールの民を罰した』と伝えられておる」
「大魔王…サターンも可哀想に…」
「ん?大魔王では無いのか?と言うかアレスはまるでサターンを知ってる風に話すのじゃな」
「タマと出逢った城が死んだサターンの居城だったのさ。もう自爆しちゃったからもうないのだけどね…」
そう、サターンは大魔王でも神でも無い、ただの天才魔導具学者ってだけの普通の人間だったのだ。自分が世の中を憂い、良かれと産み出した超魔道生物によって、結果的に同胞を滅ぼす事になってしまっただけである。それは恐らくあの【水やり】が一枚噛んでる筈だ。
彼の後悔の念はオレがあの遺された文字で見ている。前の世界でも自分の産み出した物が兵器として使われ、後悔しているのを見ている。出来るかどうかは分からないけど、サターンの後悔の念だけは伝えて行けたらと思っている。
「少なくともオレはサターンに感謝してるのさ。色々な知識を沢山得たし、何より相棒のタマと出逢えたからね」
「ニャア〜!!」
タマはオレの肩に乗り、頬に頭を擦り付けて来る。タマも其れを望んでるかも知れないね。サターンに産み出され、彼の人柄も知ってるし、彼の最期も見届けたんだからね。
「わ、我にもそれをやって欲しいのじゃ…」
サテランティスはタマに話し掛けるが、タマはシカトしていた。ガッカリするサテランティス…まあ、そんなにガッカリすんなよ。オレとお前では格が違うんだからさ。
リッカさんの所に顔を出す時にサテランティスを連れて行った。もしかして魔女の国の事を知ってるかもと思ったからだ。エルフは長寿だし五百年くらい前の事なら直接知らなくとも少しは聞いてるのでは無いだろうか。
リッカさんと薬草の件で話をした後で魔女の国の件を聞いてみる。
「サテランティスなのじゃ。宜しくなのじゃ」
「あら、可愛い魔女さんね。リッカよ、リッカお姉さんって呼んでね」
リッカさんがどれだけお姉さんなのかは敢えて聞かないけど…取り敢えずその件はいいや。
「リッカさんは魔女の国をご存知で?」
「う〜ん…私の居た村は遥か北東の方なのよね。魔女の国が存在してたのは知ってるけど、私の村のエルフで実際に見たり行ったりした者は居ないわね…ごめんなさいね」
「そうか…でもリッカさんがそんなに遠くから来てたのは知らなかったなあ。てっきり王都近辺だとばかり…」
「私も色々と有るのよ…うふふ」
「魔女の国はここの近くではあると思うけど…」
「そうね、この樹海じゃないかしらね。何なら樹海のエルフに聞いてみたら?」
「えっ?この樹海にもエルフの村って在るの??」
「そりゃあ在るわよ。私のマッピングしてる場所は外側ばかりなのは魔物の事だけじゃないのよ。縄張りってものが有るからね」
「そうだったのか…知らなかったな。まあ、樹海の開発は鉱脈の場所付近だけにするつもりだからね。でもエルフの村があるなら余計荒らしたくないなあ」
「流石はアレス君ね。やっぱり思ってた通りだわ」
「ん?そんな風に見てました?」
「アレス君は樹海に対して何かこう…神聖視的な…尊敬の念とかそう言うのを感じてたのよね」
ああ、確かに森や樹海などは神聖視と言う程ではないが「杜の神」的な畏敬の念は持ってる。前世では自然は八百万の神々だと言う教えと言うか当たり前と言うか…そういう文化だったからかな。だから樹海にも必要以上なるべくズカズカ入らない様にしてた。
「木や森には神さまが居ますからね」
「うふふ、そういう考えは好きよ。アレス君ならエルフの村でも歓迎されると思うけどね」
「でも、エルフの村って中々見つからないでしょ?」
「そうね、私の村と関係が有れば私が連れて行けるけど…ココは無理。見ては居るみたいだけど関わってこないし…多分『よっこい正吉』が一緒だからかなあ」
「えええ、そんなに凶悪じゃ無いのに…正吉が可愛そう」
「でも私と一緒に歌を歌いながら薬草採ってるから危険には見えないと思うのだけど」
「歌いながら薬草採ってるんですか?…」
「そうよ、だって退屈だもの。黙って採ってる方が不気味よ」
リッカさんが歌いながら薬草採ってるのは絵になる気はするけど、『よっこい正吉』が歌いながら薬草採ってる姿はシュールな絵面だよ。つか正吉に何教えてんだろうねリッカさんは…。
「う〜む…ちょっと待って、話し戻すけど見つからないのって結界とか魔術的なもの??」
「そうよ。結構厄介な結界ね。古代魔法とかだから簡単には破れないわよ」
「あ〜それならウチに専門家が居ますね。かなり凄腕ですから頼もうかな」
「無理だと思うわよ。どんな人かは知らないけど」
「うん、人じゃないから大丈夫かな。おい!出番が来たぞ『蜂影』!!」
すると俺の目の前に光学迷彩を解いた蜂影が現れた。リッカさんとサテランティスがビックリして後退りする。
「オレの隠密オートマタの『蜂影』です。危険は有りませんよ。あ〜リッカさんから貰った毒はこの子に仕込んでますけど、大丈夫です」
「いやいやいや、小さいとかそういうのも関係無く無理だから」
「もう試運転で帝国の城にも侵入してますので大丈夫です。今から行かせますので観てみます?」
とオレはマジックポケットからモニターを取り出してカメラを映し出す。
「この子の眼で見た映像がそのままコレに映し出す様になってます」
「わっ!ホントに映ってる!!」
「じゃあ行きますよ〜!!『蜂影』頼んだぞ!!」
『蜂影』は光学迷彩で姿を消すと、そのまま飛びたして樹海に向かった。
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