第34話 「それとも……女子高生にします?」
アパートに帰るとすでに夕食の準備が終わっているみたいで、部屋に入るとカレーのいい匂いがした。
そんなに腹が空いてた訳じゃないけど、匂いだけでここまで食欲を刺激するカレーは最強だと思う。てなわけで、
「ただいまー」
「おかえりなさーい。今日は遅かったですね?」
「ん? あぁ、ちょっとな……まぁ、後で話すよ」
さすがに黙ってるわけにもいかないだろうしな。これで黙ってて、結が後から聞いたりしたら……なんか良くわからないけど、ヤバい気がする。
「ふふ、この会話もなんだか夫婦みたいですね。お風呂にします? ご飯にします? それとも……女子高生にします?」
「いや、夫婦じゃないからな!? それに最後のおかしいだろ!」
「ちょっと冗談ですよ?」
ちょっとかよ……。なんかすっげぇニコニコしてる。
そして夕食も風呂も終わり、部屋で座椅子に座りながらスマホをいじってると、風呂上がりの結がタオルで髪を押さえながら俺の後ろのベッドに腰を下ろす。と同時にいつものシャンプーの匂いがした。
「ここ、失礼しますね。それで話っていうのは?」
「えっとだな……」
そこから俺は今日の帰りにあったことを話した。結はときどき頷きながら黙って聞いている。時折考え込むような仕草はしていたが、結局最後まで口を開く事はなかった。
そして全て話し終わると、ようやく口を開いた。
「もし、晃太さんともう一度……っていう話だったらどうするんですか? まだ未練とか思うところはあります? またねってことは、そのうち来ると思いますよ? そうしたらどうするつもりなんですか?」
「もうさすがに未練とかはないかな。ただ、一方的に切られたからちゃんと話したいってのはあるかも? 色々とわからないままだしな。もし来たら……話は聞いてみようと思う」
「いいと思いますよ? ちゃんと話して、憂いが無くなったら晃太さんの気持ちの整理もつくでしょうし、そうなったらもっとグイグイいけますから」
おっと、予想外の答えがきた。てっきり、「イヤだ」とか「ダメです」とかって言われると思ったんだがな。そして最終的にソレか。ぶれないなぁ。
「ただ……」
ん? なんだ?
「晃太さんって流されやすそうだから、そこがちょっと心配です。目の前で泣かれたりしたら慰めたりしそうですもん」
「ぐっ……それは……いや! さすがにそれはないぞ! あんなフラれ方してんだから戻ることはないっ!」
「ホントですか? じゃあ……えいっ」
ニュッと俺の顔の両脇から結の両腕が伸びてくると、そのまま首に回されて後ろから抱きつかれた。俺の顔のすぐ横に結の顔。背中には柔らかい感触が二つ……え? 付けてないのか!?
「ちょっ! おいっ!」
「なんですか?」
「ふひゃっ!」
結が耳元で喋るものだから、息がかかって変な声が出た。
「ふふ、可愛いです」
「いやいやいや、恋人でもないんだからこーゆーのはまずいって!」
「なんでですか? 相手が嫌がってるならダメでしょうけど、私はイヤじゃないです。晃太さんは? イヤなら外して下さい。けど、外したら落ち込みます」
「それはズルいだろ……」
「私の勝ちですね♪ とゆうわけで……チュッ!」
いぃっ!? 今度は頬にキスされた!?
すると、さっきより強く抱き締められる。
「もし、相手と話をすることになっても情に流されないようにするおまじないです。ズルいかも知れませんが、私は晃太さんを誰にも渡したくないんです。ホントは会って話もして欲しくないけど、今の私にはそれを止める権利がありません。だからせめて晃太さんの心の中のどこかに私の気持ちを置いておけるように……」
「……わかってるよ。あいつの口振りだときっとまた来ると思う。その時はちゃんと絶ちきって結の事も真剣に考えるから」
「はい……じゃあ今夜はもう寝ますね。おやすみなさい」
そう言うと、結は俺から離れて自分の部屋に入っていった。カーテンを閉める前に軽く手を振りながら。
━━いつも読んでくれてありがとうございます。
面白いよ! もっと読みたいよ!って思っていただけましたら幸いです。
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