閑話 1-2 【天音 結の決意②】
「どっちかうちの晃太の嫁にこない?」
晃太おにいちゃんのお父さんがいきなりそんな事を言って、私がびっくりしていると横からお母さんが口を出した。
「和臣君、いきなりすぎじゃない? ちゃんと順を追って説明しないと。ね? 有華ちゃん」
「そうよアナタ。二人ともびっくりしてるじゃない」
「ん? あぁそうか。すまんすまん」
この二人。【真峠
なにを任せるんだろ?
「さて、最初から説明しようかな」
和臣さんが姿勢を正すと、真剣な目で私達を見てきた。
「二人とも晃太の事情は簡単には聞いてるよね?」
「「はい」」
私達は揃って返事をする。
「うん。それならいいんだ。今から俺達が話すのは、晃太の親としての勝手なワガママだ。だから無理強いはもちろんしないし、興味がなければすぐに会話を止めてもいい」
私達は頷く。
それを見て今度は有華さんが口を開いた。
「じゃあまず最初は、晃太が帰ってきてからの仕事のことなんだけど、これはもう柚ちゃんがなんとかしてくれたみたいね?」
え?
「はい。ちょうどうちの学校の用務員が、年齢の事もあって後継を欲しがっていたので、連絡があった次の日に聞いてみたら即OKでした。ちょうど私と晃太が世話になった先生がいたのが幸いしましたね」
「うん、柚ちゃんホントにありがとね。ずっと家にいたらあの子ダメになっちゃうから」
「いえ、そんな……」
おねぇちゃんそんな事してたんだ……。
「それでここからが本題なんだけど……柚ちゃん結ちゃん。二人は、晃太の事を男性として意識してたりしないかしら? もし、異性としての好意を持ってたら……うちの晃太の婚約者になってくれない?」
「「っ!」」
その言葉に私は固まってしまう。
婚約者。それってつまり……いずれはお嫁さんって事だよね……ふへっ……ニヤケちゃう。
軽く頬を押さえながら隣にいるおねぇちゃんを見ると、いつも通りの顔をしていた。そしてそのまま口を開く。
「あの、理由を聞いてもいいですか?」
「えぇもちろん。あのね? こっちに帰るって内容の電話が来たって言ったじゃない? そのときね……晃太の声から伝わる感情が薄かったのよ。ホントならもっと怒ってもいいし、悲しんでもいいのに。言葉だけは強い言葉をつかってるのに、それを話す声は淡々としててね……」
晃太おにいちゃん……。
「それで、このままじゃ晃太の心が潰れちゃうと思ったのよ。それで、二人のどちらかが晃太を支えてくれたらいいなって思ったの。あなた達なら小さい頃から知ってるし、信用出来るから。ごめんね? 勝手な事言ってるのはわかってるんだけど、このままだときっと私達には言わないで隠して最後には潰れてしまいそうで……」
どうしよう……私は……どうしたら……。
おねぇちゃんは? おねぇちゃんはどう思ってるのかな?
そう思っていると……
「すいません。私は無理です。その……彼氏がいるので……」
「えっ!?」
え? 彼氏? 初めて聞いたよ!?
「え、ちょっとおねぇちゃん? 私、初耳だよ?」
「あ、うん、言って……なかったから……だからごめんなさい」
「あぁ柚ちゃん、あやまらなくていいのよ? こっちのわがままなんだから」
「はい。だから……」
そう言いながらおねぇちゃんが私の方を見てくる。そして耳元で小さく……
「結、ずっと好きだったんでしょ? いいの? このままだとまた誰かに取られちゃうよ? もしかしたらまたヒドイ人に……」
っ!? それは……イヤッ!
そう思った時にはもう、口も体も勝手に動いていた。立ち上がり、テーブルに両手をついて私は言う。
「わ、私が晃太おにぃちゃんのお嫁さんになりますっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます