第100話 豚人討伐
結局、予想通り出発は2日後であり、その間シュウ達はスキルの練習を兼ねて野獣討伐の依頼を受ける事にする。
「
「はい。ありがとうございます」
受付嬢の言葉にクムトが礼を述べる。
「では、早速行ってきますね」
「行ってらっしゃいませ」
お辞儀で見送る受付嬢を後に、シュウ達はギルドを出てそのまま街門へと向かった。
この日の天候もよく晴れていた。
戦争前という事で人の出入りが減るかとも思っていたが、人の流れに然程変化はなく、敢えて言うなら街の雰囲気が多少物々しさが増している程度だった。
人並みを抜け街の外へ出たのは昼前だった。
「さて、目的の
シュウの質問に答えたのはパーティの知恵袋たるデュスだった。
「そうさのう。西の山岳地帯辺りで集団が目撃されとるらしい」
「なら其処までは特に何もないんだよね」
「まあ、そうじゃのう。野良の野獣でも現れん限りは特にする事も無いじゃろ」
「ならさ、積層魔方陣の練習してもいい?」
妙にやる気を見せるティルに思わずクムトが苦笑を漏らす。
「ティル、今日は妙に張り切ってるね」
「だってさー戦争の時は後方で静かにしてるんだよ。なら今の内にシュペルとの連携の練習したいじゃん」
ティルが口を尖らせて言い募る。
余程戦争時に一人だけ後方に居るのが不満なのだろう。
戦場に、それも最前線に行かなくてもいいという事なのだが、ティルはそれを不服と思っている。
シュウなどからすれば、命のやり取りをしなくて済むだけ羨ましいとさえ思っているのだが。
「焦ること無いと思うけど……まあやる気が有るのは良い事だよね」
「でしょでしょ!」
ティルからすれば皆が危ない場所に行っていて、自分だけが安全な後方に居る事が我慢ならないのだ。
それが分かるだけにクムトも苦笑しているのだが。
「取りあえず思いついたのは、シュペルを固くして、敵に突っ込ませる事なんだけど、どう思う?」
ティルのイメージは魔方陣で身体を鋼鉄化させ、速度を上昇させるバフを掛けて突撃させる戦法だった。
「おう。中々いいんじゃないか」
「そうじゃのう。先制としては使えるやも知れんの。問題は継戦能力じゃな。シュペルの体格じゃと一撃離脱が定石じゃろう」
「そうですね。チクリと刺して逃げる、これが一番ですね」
各々の肯定的な意見を聞いて、ティルの顔も綻ぶ。
「まぁどれだけ効果が持続するかで戦い方も変わるだろうな」
「あーそうかぁ。魔方陣がどれだけ持つかは試してみないと分かんないや」
「まぁ
「うん。そうする」
ティルもシュウの意見を参考に、ああでもないこうでもないと思考錯誤する。
「まだ焦る必要は無いよ。山岳地帯まで時間も有ることだし」
クムトの言葉にティルは頷いて答えるのだった。
「シュペル、ゴー!」
「チイッ!」
宙に描かれた魔方陣の中央を潜り、シュペルが豚人に向け高速で突撃を敢行する。
「ブヒィ!」
狙い違わず、シュペルが豚人の胸元を貫通し、その命を散らせる。
「おぉ、いい感じじゃねぇの?」
「うむ。一対一じゃと問題なく倒せるようじゃの」
「どうどう! さっすが私! 魔方陣もある程度は長持ちするし、戦力になるよね?」
自慢気にピスピスと鼻息荒く捲し立てる。
「あぁ、十分戦力になる。シュペルもよくやった」
「チュチュン!」
シュペルも嬉しそうにシュウ達の周りを飛び回る。
「うむ。一撃離脱を心掛けておれば問題はないじゃろ」
「本当に凄いよ、二人とも」
「えへへぇー」
「チュン!」
クムトの絶賛に嬉しそうに顔を綻ばせるティルと元気に飛び回るシュペル。
「まぁ何にせよ、これで依頼も達成だな」
既に
特に討伐する数も最低五匹と上限は決まっていない為、元から討伐は程ほどに切り上げて、早めに帰る事にはしていたのだ。
問題なく依頼達成だろう。
「そうじゃな。明日は出撃じゃし、今日の所は早う戻るとするかの」
「ですね」
クムトとデュスも依頼達成には異論無いようだ。
シュウ達はそのまま何事もなく街に戻りギルドに依頼達成の報告する。
特に問題なく依頼料を受け取れたシュウ達は、出発前日と言うことで多少豪華な食事を取り、その日は早めの就寝となったのだった。
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