再び奇妙な味問題にぶち当たる
乱歩の思う「ヒッチコック好み」を探るもう一つのキーワードは「奇妙な味」。これは過去の回でも取り上げていますが、難しい問題です。なぜならば「奇妙な味」というものの定義そのものが難しいからです。
一つ言えそうなのは、言葉を作り出しただけあって乱歩が「奇妙な味」を好きだということ。「ヒッチコック劇場」の原作になった作家は「奇妙な味」系の人が多いのです。ですから、乱歩の思う「ヒッチコック好み」には「奇妙な味」が深くかかわっていると推測できるのです。
サスペンスという言葉を手がかりにすると、「奇妙な味」には現実から浮遊したような宙ぶらりん感があるのではないか、という考えが浮かんできました。数センチ浮いているような地に足のついていない感覚。別に落ちても死なないし、捻挫もしないから恐怖ではないけれども、落ち着かない感覚。
今回、取り上げている「クリスマスに帰る」はストレートな「奇妙な味」ものではないけれども、幕切れに少し「奇妙な味」の香りを感じます。いえ、落ち着かない感覚は中盤から後半にかけて、ずっとつきまとっています。
このまま進むはずはない。
どこかで「オチる」はずだ。
読者は不安を抱えながら話を読み進め、最後には……乱歩が書いているから書いてしまいますが、確かに「オチ」るのです。
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