疑いの眼差し

 はっきりとした証拠がないときに、人間は疑惑の人物に対してどう行動するか。「疑惑」のママリイ氏は実によいサンプルです。

 バイアスがかかった状態の人間の脆さや危うさみたいなものもよく描かれていて、ただの推理パズルでは味わえない魅力があります。

 ミステリーを書くうえでのテクニックの一つに読者に登場人物を疑わせるアレコレがありますが、なかなかバチッとは決まらないもの。

 推理小説を楽しむようなかたは疑い深く、容易には騙されません。

 セイヤーズの回でまたクリスティーを引き合いに出して、本当にセイヤーズの亡霊に怒られそうですが、クリスティーがうまいのは特定の誰かに疑いを向けさせるのはダミーで、特定の誰かだけは犯人ではないだろうというトラップを仕掛けている点だと思います。

 作品名は出しませんが、わかりやすいところだと、ほら、あれですよ、あれ。

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