標的

 しばしば、動機から犯人を推理するのは邪道だという意見をみたりきいたりします。

 特に本格ミステリや【犯人当て】では、この傾向が顕著です。

 それには一理どころか、二理も三理も、いや、十、百、千、万もの理があるとしたうえで書きます。

 やはりミステリーに動機は重要なものだと。

「偶然の審判」では、表に見える様相からでは犯人の標的が不明であり、動機も不明です。

 これが生み出す効果が実にうまい。

 犯人当てのようにデータが埋め込まれているわけでもないので、読者はどこから推理したらよいか、フラフラせざるをえません。

 足場がないのですから。

 無理につくったとしても、今度はそれが正しい立ち位置なのか疑いながら推理(というか想像)せざるをえない。

 ホントに人の悪い作者だな、となるのです。

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