トリックのために
特に密室ものに顕著ですが、「トリックを思いついたから書いちゃいました」という作品に対するミステリ好きの評価は低い傾向があります。ある程度、数を読んでデータが蓄積されてくると、この傾向は強くなるようです。
私は甘いのか、そういう作品も好きで、むしろチャーミングであるとすら思うこともあるのですが、そういう人は少数派のようです。
そして「トリックを思いついたから書いちゃいました」に対する厳しい見方は、現代に近づくほど、ミステリが進化していけばいくほど強くなっているようです。
裏を返せば、古い作品だと結構、大目に見られている、ということです。これは用いられているトリック自体がそのトリックのジャンルの第一号で、特許を持っているも同然という作品である場合もあります。
古い作品だと、まだエンターテイメントと文学の棲み分けというか、割り切りがされておらず、たとえミステリであっても、人間の行動にはその人物を支配する論理が貫かれているはずだ、その行動原理を描くのが作家としては普通のことという考えが当たり前にあるからかもしれません。
ポオはミステリを書こうと思ったわけではなく、物語を紡ごうとしただけで、選んだ題材が犯罪でアプローチの仕方が従来のものとは少し違っていたというだけでしょう。どの時代からミステリと文学というように分けて考えるようになったかは、壮大なテーマで今ここでは結論づけできませんが、マックス・カラドスの活躍した頃には、ミステリというジャンルは確立していたと思います。ただそれでもどこかに物語作者は当たり前に人間を描くというスタンスが残っていた時代でもあったとも感じるのです。
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