レントン館盗難事件

 三番目の収録作品は「レントン館盗難事件」。個人的には一巻のなかでは最も好きな作品です。一巻のベストは「十三号独房の問題」だろうという意見は多そうですが、好みでいえば、これ(確かに「十三号独房の問題」は面白いのですが)。

 作者はアーサー・モリスン。コナン・ドイルと同時期の作家です。お抱え探偵のマーチン・ヒューイットはホームズのライバルの一人です。

 探偵物語のフォーマットにのっとっている短編なので読みやすいです。冒頭の依頼人とのやり取りに見られるユーモアが、イギリスのしゃれた感じ。ホームズとはまた違ったタイプの変人だということが伝わる優れたオープニングでもあると思うのです。

 事件は連続する不可解な盗難。この話でも「マッチ」が登場します。割とポピュラーなアイテムだったのだろうな、と想像できます。ネタを割らないように注意して書きますが、なぜか犯行現場に残されるマッチが重要な手掛かりになります。

 真相というかトリックというかも、ちょっとユーモラスでお気に入りの理由はそのあたりにあります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る