1860年というのは何年前だろう

 コリンズの「人を呪わば」は書簡形式というか、刑事たちの間でやり取りされる報告書の形で語られます。ちなみに発表は1860年とのこと。

 変化球というか、ちょっとひねった語り口なのに覚えていない。うろたえたまま読み終え、作者の狙いはなぁんとなくわかったものの、なにか大切なポイントを落としているのではないかと不安なまま、次の「安全マッチ」に進みます。

 作者は「チエホフ」と表記されてますが、あのチェーホフ。ロシア文学を代表する大物です。間違ってもチェーホフはミステリ作家ではない。文学かミステリかみたいな議論をすれば、文学サイドのかたです。

 国語便覧なんかに載っていそうな、ごりっごりの文学者がミステリを手掛けているのは珍しいことではありません。日本でいえば、たとえば谷崎なんかも書いています。

 さいわい「安全マッチ」のほうは途中から「そうだ、そうだ、読んだことある」となり、落ち着いて味わいます。オチも記憶通り。

 どうもこの時代には、まだジャンルとしてのミステリーが確立しておらず、ミステリー専門作家というよりは、ミステリーも書く作家がいたという程度のことなのではないか、と。

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