2☆これだから女の子ってヤツは
無事に蟻を駆除し終えた三人は、小雪が用意した冷たいお茶を飲んでいた。
「亜実さん、壱くん。先程は、本当に申し訳ありませんでしたわ」
きゅるるん、という効果音がぴったりというように、小雪が少しあごを引いて上目遣いで謝れば、
「お、おぅ……大丈夫だ。気にするな」
と壱が先程の惨禍も忘れてすぐに許し、
「大丈夫だよ、小雪ん。可愛い後輩のちょっとしたイタズラだと思えば……」
と亜実がすかさずフォローを入れる。
はは、と力なく笑うこの二人、ひとつ歳下の可愛い後輩である小雪にはめっぽう甘いのであった。
ふぅ。落ち着いたところで、ガラガラッと部室のドアが開いた。
「あのー、お助け隊さんに、依頼をしに来たんですがー……」
大人しそうな、黒髪のボブヘアーの女子生徒だ。リボンが青なので、三年生だろう。
小雪が、持参した高級カステラをカットして出す。
「あら、ありがとう。──本題なんだけど、私の妹が、生で結婚式を見たいんだって」
「へえ。結婚式! ロマンチックで良いですね」
亜実が瞳をキラキラさせる。
「ったく、他人の結婚式なんて見て何が良いんだァ? これだから女の子ってヤツは」
壱が興味無さそうにそう言う。
「男子にはわからないのよね〜。女の子なら誰でも一度はウェディングドレス着てみたーいって憧れるものなのよ」
「妹は、結婚式、もうずっと見られないかも知れないの」
と悲しげに言った。
「どうしてですか?」
小雪が問う。
「私の妹は、入院してるの。今度、助かるか助からないかの大きな手術をアメリカで受けるの。それしか、もう、手はないの」
シン、と部室が静まり返った。
先輩がこほんと一息ついて、ぱっと声を明るくして言った。
「そこでね、お願いなんだけど、亜実ちゃんと壱くんに、是非結婚式(的なもの)を、私の妹のルミの為に、病院の病室でやってくれないかなぁって」
「はあぁあ⁉」
と壱が立ち上がる。
「何スかそれ⁉ 亜実と結婚式なんて嫌に決まってんだろ! スマホの画面にヒビ入るよりイヤだわ! こんな、怪力ゴリラ女!」
壱の言葉にピクッと反応する亜実。
「誰が怪力ゴリラ女じゃい! やんのか苺!」
亜実が壱の胸ぐらをガッと掴む。その握力たるや、本当に本物のゴリラに匹敵しそうである。そう。亜実は圧倒的怪力を誇る女の子なのであった。
「ああ、やってやるよ! 苺呼ばわりは許せねぇ!」
亜実の手首を掴み返す壱に小雪が一言。
「壱くん。手、震えてます」
「…………」
「……ハッ」
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