第44話 宣誓

 音がなくなった玉座の間。

 カリウスは張り詰めていたものが消えたように胸をなでおろした。

 長きに渡る闘争が終わったのだ。腰を上げて、勝者へと歩み寄る。

 エレナは憑きものが取れたかの清々しい表情で、カリウスを迎えた。


「終わったわ、終わったの。長いかった、長かったけどミルンを、倒した……」

 

 自分に言い聞かせるように呟くエレナは、眩暈がして倒れそうになってしまう。


「とっと。大丈夫ですか?」

 

 カリウスがすぐに抱き寄せて支えた。


「ちょっとだけ立ちくらみがしただけよ」

 

 エレナは心から安堵した顔で、カリウスに視線を寄せた。

 そこでカリウスは、今こそ全てを伝えるべきだと決意する。


「エレナさん。俺、今回の試験の裏事情に輪廻転生の仕組みも、全部ユートから教えてもらいました。あいつ、ずっと俺の中にいたみたいで」

「え……」

 

 エレナは双眸に驚愕の色を映し、様々な思いが混じった複雑な顔つきになる。

 流石に想定していなかったのだろう。しかしこれだけでは終わらない。


「そんで、エレナさんへの伝言も預かってるんです」

「……!?」

 

 衝撃の連続で言葉にならない。

 魂になっても尚、エレナを案じていた者達。

 悠久の時間を経て、その想いを――


「ユートを含めた光の皆は全員、魂が輪廻を輪に組まれようがエレナさんを心から応援しているそうです」

「――ッ! うん。わかった。わかったわよ。ユート、皆……」

 

 仲間達の激励へ堰を切ったように泣いた。

 憂う必要はない。心置きなく前へと進める。

 カリウスは彼女が泣き止むのを見計らい、


「エレナさん。ルイはその内に起きるだろうし、師匠とアンジェさんを助けに行きましょう――」

 

 そう提案した時だった。

 失神していたルイが、今更になって飛び上がる勢いで起きたのである。


「はにぁッ!? ――あれ……。ミルンが、いない?」

 

 状況を理解できずに慌てふためく。

 無理もない、知らぬ間に戦いは終わっていたのだ。


「終わったんだよ。エレナさんがカタをつけたのさ」

 

 カリウスが穏やかな口調で伝えると、心から安心したかその場へと座り込んだ。


「そう、なんですか。あのぉ、それでは世界管理者試験は、その」

 

 その疑問を受けて、エレナがカリウスから離れてルイの元へしゃがみ、柔和な笑みを浮かべる。


「えぇ。決着はついたわ。それで、あんた達の時代にわたしがいるのはね、昔の戦いで前面衝突した時、わたしの仲間が使った聖遺物で時間を越えてしまったみたいなの」

「ふぇ、時代を、移る? ふぇぇぇぇぇっ!?」

 

 想像もつかない内容に素っ頓狂な声を上げる。当然の反応だ。


「わたしだって驚いたわよ、アイツがベラベラと喋ってきた時は。でもね、全て解決した。あんた達のおかげよ。助けてくれてありがとう、ルイ」

「そう、ですか。ちょっとまだ飲み込めませんが、とりあえずお役に立ててなによりです」

 

 瞳をぱちぱちと瞬かせて言うルイを、エレナが抱き寄せた。

 豊満な胸に包み込まれ、少女は居心地よさそうに顔を擦り付ける。 

 その優しい光景をカリウスが微笑ましく眺めているところだ。


「打ち所が良くて助かった。決着は、ついたようだね」

「ユウ殿を探す間に終わってしまったのか。それでもハルバーンさん。仇はとりましたよ……」

 

 ユウとアンジェが部屋の左方――壁が滅茶苦茶に大破した方向からゆっくりと歩いてきたのだ。

 頑強な元女王補佐官は元よりユウなら無事だろうという実態のない確信がカリウス、ルイ、エレナにはあった。

 それでも実際に元気な姿を確認し、三人はほっとした様子で戻ってきた二人を迎える。

 そして誰となく声を掛けようとした時、アンジェが有無を言わさず頭を下げた。 いきなりの行動に、残り四人は面食らってしまう。


「エレナ殿は元より、ユウ殿ら関係のない者を国の一大事へ巻き込んでしまった。まんまとミルンに操られ、牙を向けた挙句その手を借りて国を欺いた諸悪の根源を倒してもらった、と。本当に申し訳ない。このアンジェ、自分が情けなくて、情けなくて……」

 

 鼻をぐずらせながらの謝罪。

 悲愴の涙は決壊寸前。ハルバーンのことを考えると尚更だった。

 しかしユウが難しい顔でアンジェに向き合う。


「いや、謝る必要はないよアンジェ。エレナはともかくぶっちゃけあたし達、ガルナン王国の臣下なんだ」

「なんとッ……!?」

 

 目を見開いでたじろいだ敵国の人間に、


「ホント。一年前に君らの国とエレナとあたしで色々あった関係でずっと脅されてて、うちらの国も気が気じゃなかったんだよ。だから明日の夜、この赤い髪の男の子と銀髪の女の子、そしてエレナともうエフレック入りしてる連中と王城に侵入して、ミルン女王を暗殺する予定だったの」

「そ、それではッ」

「うん。ま、その必要もなくなっちゃったけど。下見と偵察しに来た途中から、ミルンが動き出したからね」

 

 真実を明かすユウ。アンジェはショックのあまり、固まってしまっていた。

 彼女の心の中で様々な思いが入り乱れるだろう。

 エレナは事情を聞いていたので黙って話を聞いていた。聖人の若者らはユウの行動を知らなかったため、少々の驚きがあった。


「――つ、つまり、師匠は俺達が着く頃より早くに入ってたんですね。どっかで俺達を見ていたから早急に対応できたのか」

 

 カリウスが訊くと、


「だね。それと、いつから見ていたかはカリウスとルイの想像にお任せするよ」

 

 肯定の他、意味深な含み笑いを返された。

 愛弟子二人は意味がわからず顔を見交わした。

 そして――


『ミルン様ッ、アンジュ様ッ、何処ですかーッ』

 

 つかの間の平和的な光景は打ち止めとなるようだった。

 下の階から多数の足音と叫び声が響いてきた。もはや到着間際でもある。


「なぬぅッ。玉座の間が見るも無残な有り様ではないか。しかも死体、焼けた死体がッ!?」

「アンジェ様があの罪人共に拘束されているぞ! しかも増えてるしッ! 広間にも死体が詰め込まれてたしどうなっている!? 敵に攻め入られたというのか!」

「おお、ヤスケール様まで倒れているじゃないか。くそぅミルン女王は一体どこへッ。アンジェ様、今お助けしますぞッ!」

 

 王都警備隊や出勤してきた騎士団本隊。そして城内警護の兵士達が異常を嗅ぎ付け、詰めかけてきたのだ。


「きやがったのかい。してもタイミング悪ぃなおい」

 

 カリウスの声が不安で震える。

 激しい戦いを終えたばかりの一行では、相手するのに厳しいまでの大御所帯。

 わらわらと数を増して、一行を取り囲んでいく。

 ユウは突如発生した危機に、判断を決めかねていた。


「チッ、失念していた。ミルンを倒すのに夢中になり過ぎてたよ――アンジェ?」

「ここは任せてくれ。自分に考えがある」

 

 そこで項垂れていたアンジェが復活し、さっそうと両陣営の間に入ってきた。


「アンジェ様ッ」

 

 武装した一人の騎士が走ってきたが、


「来るな」

 

 元女王補佐官は声を張り上げて拒否。片手を突き出して静止させた。


「お前達、よーく聞けッ。この者らは敵ではない。逆だ、命の恩人なのだ」

「な、何ですとッ!?」

 

 予想だにしない発言だったのだろう。大きなどよめきが生まれた。

 アンジェは丁度足元に落ちていたファズを拾い上げ、全員に見えるよう掲げる。


「話せばならないことがある。ハルバーン様亡き後、この人の心を操る聖遺物で国家転覆を謀っていた悪党がいた。今回の件も全てそいつによるもの……まず手始めに、女王を操り凶行に差し向けたのだ」

「えぇッ!?」

「ヤスケール殿までも操り聖遺物を継承させた、戦力増強のためにな。裏から手を引いていた悪党が、隠れていたところから女王を操ろうとしている場面に出くわした自分は当然捕らえようとしたのだが、そこへこの者達が来たというわけだ」

 

 事件の全貌――否、作り話を語る。

 壮絶な内容にガルナン王国の戦士達は周章狼狽だ。


「そんなことがッ!? それでッ、ミルン様、女王様は何処へ?」

 

 一人の兵士が青ざめた顔で質問を投げかけた。

 補佐官は悲しげな表情を作って答える。


「皆、心して聞いてくれ。悪党は口封じのため自分達を殺そうとした。悪党は勇敢に戦ったガルナン王国の戦士達とこの者らの助力もありなんとか始末したが、遅かったのだ。女王は聖遺物の副産物で衰弱しきり、そのまま逝ってしまった」


 ガルナン王国の兵士達の顔は皆揃って青ざめてしまったようだ。

 次には一人、また一人と泣き崩れだす。男達の悲痛な叫びが渦となる。


「この黒い衣服を纏った女性の聖遺物で、悪党を巻き添えに残さず燃やしてくれと仰られたんだ。他にも遺言を自分に伝えてな……」

 

 言い切ったアンジェは嗚咽を漏らした。勿論演技である。

 カリウス達はあまりの大ホラに唖然とすると同時に、咄嗟に都合の良い話を創作したアンジェの機転に感心さえ覚えた。

 そして、敵味方問わずこの場にいる全員が、誰とも言わず待っていた。

 アンジェが話の最後に言った遺言の内容を。

 嘘の涙を拭き凛とした表情となったアンジェが、酷く暗い顔の戦士達を見渡し、


「遺言の内容を発表するッ! ガルナン王国は予定していたデューン王国への侵攻作戦撤廃。後日直接謝罪に赴いた後に自身を弔ってくれと。以上だ」

 

 厳かな口調で創作話を締めた。

そして次に憂うべき問題、国のこれからを考え始めなければいけなかったのだ。


「悲しみに浸ることを女王は望んではおられない。これよりエフレックの広間に民衆を集め、事件の真実を余すことなく伝えねば成らぬ! 速やかに伝達し合え。皆、国中に触れ回れ!」

 

 アンジェが空気が振るえるような大声で指示を出した。

 ガルナン王国の戦士達は泣き止み、未来の国主になるだろう人物の命令へ従い、動き出していく。

 偽りの顛末を伝え終えたアンジェが、カリウス達の方へ向き直る。

 今度は嘘ではなく本物の涙を流していた。


「仕方がないではないか。今はこうするしかないじゃないか。自分だって、ハルバーンさんを騙してのさばった奴を庇いたくはない。だがあの時に聞いた話の内容……自分だって理解が追いつかないのだ。ミルンとエレナ殿が世界管理者試験の参加者、創世記が本当の話だったなんて。それでも自分は、今から国を変革していかねばならないんだ。無用な混乱を招いてはッ!」


 ファズを地面へ投げつけてそのまましゃくりをあげた。

 どこに矛先をぶつけていいのかわからない、そんな怒りだった。

 カリウスは二十三歳――年相応の女性でもあるアンジェへ、


「アンジェさん。あんたの悲しみは計りしれねぇ。気休めにしかならないと思うが、それでも聞いてくれ。俺達は――いや、この大陸中の皆は悪夢に魘されていたんだと思う。でもやっと解けたんだ。ガルナン王国とデューン王国、ルアーズ大陸中の国が今こそ平和について考えるべきなんだと思う。悲しみの連鎖はここで、俺達で断ち切ろう」

 

 宥めるような落ち着いた口調で、自身の考えを吐露した。


「カリウスの言う通りだ。あたしが言うのもなんだけど、もう戦は疲れたよ。聖遺物が発掘されてから皆唯一無二の力を求めようと大陸中が狂ってたけど、もう潮時だ。少なくとも争いの種は一つ減ったんだ、世界が争い合う理由がね」

「共にこの大陸の未来を作って行きましょう。私達の責務なんだと、心から思います」

 

 ユウとルイも各々の決意を口にして、アンジェの手を力強く握り締める。


 皆の言葉に頷いたアンジェはゆっくりと顔を上げる。

 真剣の色を宿した翡翠色の双眸で、黙って話を聴いていたエレナを捉えた。

 見定めるような視線だ。

 事情はどうあれ、アンジェにとっても信じがたいがこれだけは事実―。

 不老の魔女と呼ばれていた目の前の女性が創世記を完成させて神になろうとしており、デューン王国もそれを支援しているというのだ。

 意図が、その心持を知りたかった。


「あなたが何者かと、過去にどう生きていたのかはこの際どうでもいい。エレナ殿、一つだけ教えてくれ。光の神々は世界を管理する神になり、何を望むのだ。世界を、どうしようとしている?」

 

 噛みつくような声で訊く。返答次第ではただでは済まないといった様子だ。

 デューン王国側の三人はエレナを信じているため、何の心配もいらない。

 一間置いた後、エレナは全てを包み慈しむような瞳を向け、


「わたしは、光の集まりは世界を自然のままに委ねて管理していく。ミルンが望むような淀みで溢れた世界にする気は毛頭ないから。でもね、歴史を作っていくのはあなた達、地上で生まれた人間なの。忘れないで、この世界を生かすも殺すもあなた達次第だわ」 

 

 優しく忠告するように答えた。

 太陽のように晴れ晴れしいく、欲望のひとかけらもない。

 アンジェがこれ以上ない暖かな返答を受けて、警戒心を瞬時に解いた。


「成程、私達次第と――そうか、大陸制覇のため争いと支配の日々を突っ走っていたが、神やお前達にそう言われては戦う必要はないと考えを改めなければな……。エレナ殿、ならば私も約束しよう。空へ昇るあなたへ、平和に満ちた最高の光景を見せると」

 

 続けて平和への誓いを宣言。

 カリウス、ルイ、ユウ、エレナはそれを受けて光のような笑みを零した。

 新世代の担い手達の心が一つになった瞬間――


『やれやれ、やっと試験が終わったぜ。ようやく俺もお役ゴメンってワケだ』


 王座の間の天井より、低いがよく通った声が響いたのだ。


 カリウスにユウ、やらエレナにユウは突然響いた謎の声に驚きながらも戦闘態勢を取り、アンジェ含め兵士達は突然介入してきた「天からの声」にどよめいた。


「この声は、ダイシ新官長!?」


 アンジェや彼らにはわかった。声の持ち主が自分達も知っている出生不明な人物であることに。


「知ってるの、アンジェ!」


 ユウが問い、元女王補佐官は混乱しながらも頷く。


「あぁ。この声はミルンがどこからか連れてきて、自分を崇めるためだけに作った神殿の神官長として任命したダイシという者に違いない。そして奴はミルンと共に私達を欺いたんだ!」


 説明し、憤怒の念を滲ませた表情で拳を握る元女王補佐官。


「なんですと、ダイシ殿がッ!?」

「やはり信用できぬ者であったかッ。そんな奴がミルンと共に国を滅茶苦茶にッ」


 部下の兵士達も明かされた事情へ、困惑と怒りにざわめいた。

 内情を把握したカリウスもダイシなる人物に向かって、


「成程な、ミルンと手を組んでたもう一人の黒幕ってことか! 野郎、今すぐ出て来やがれッ」


 高い天井を見上げて問いただし、


「もう戦いは我々の大勝利に終わったんですよッ。さもなければ調教の刑ですッ!」


 ルイもカリウスへ続いて勇ましく叫ぶ。

 しかし無言。返答がない。

 静寂が訪れる。それでもこの場にいる者達は皆は警戒したまま天井一点から視線を話さない。


「ミルンの配下の神官長か。エレナ、これはどういうことなんだろうね。敵はまだいたのかな!?」


 声が聴こえてからも比較的冷静さを保もち、状況を見定めていたユウではあるが、冷や汗を垂らしながらエレナに想定外の出来事への意見を求めた。

 赤髪の友の不安そうな視線を受けたエレナ。ダイシと言われた者の言葉とアンジェが話した内容について思考したまま沈黙を貫いていた彼女は首を振った。


「いえ、闇の生き残りはミルンだけだったハズ。それに参加者でレッグスなんて名前の人はいなかったわ。でも試験がどうこうって」

 

 闇勢力は全滅したのは確かなのだ。真っ新だった大陸での最終局面でも最後に立ちふさがったのはミルンだった。


(声の主、ミルンの手先になった奴が支給品を使ってわたし達に呼び掛けたと考えるのが妥当ね。けど、何のために? しかもそいつは何故世界管理者試験が終わったと把握しているの)


 謎の存在に困惑して細く弧を描いた美しい眉をひそめるエレナだが、このままでは埒があかないと深い息を吸った後、


「一体どこにいるのッ! 出てきなさいッ!」


 姿を隠す新官長へ向かって威圧を含んだ声色で叫んだ。

 そして天からは――


『オイオイ、勝利後の話は上で大昔に教えたハズだぜ。勝ち残ってハイ終わりじゃないんだよ、世界管理者試験は。神様になる前に会う者がいるだろう?』


 呆れたような返答。

 そして言葉を受けたエレナ――世界管理者となる彼女は天から語りかけた者の正体がようやくわかり、ハッと息を呑んだ。


「まさか、あなたは!」

『そのまさかだ光のエレナ。早くここから抜け出してぇからわざわざ呼び掛けてやったんだよ。てめぇらの試験不具合に巻き込まれた不運な審判役、レッグスがなぁ!』


 声の主は、エリアル創世記にも記述されている世界管理者試験審判だったのだ。


「ダイシ新官長が、世界管理者試験の審判ッ!?」


 新官長として連れられてきた者が天上の使いだったと知ったアンジェや兵士達の瞳が驚愕に見開く。驚天動地の心境となるのは、デューン王国御一行やエレナも同様であった。


「ミルンの手先が神の眷属の審判だと。てめぇどういうつもりだッ。今更出てきやがって!」


 怒りを含んだカリウスの叫び声。

 ミルンとの関係もだが、それよりも彼が激怒した理由は、支給品の不具合がなんであろうと百年も真実を知らず放置されたエレナを憂いてのものだった。

 しかし飄々としたレッグスは、面倒くさそうに溜息を吐いた後に言った。


『やれやれ、俺も巻き込まれたって言っただろうが。ユートの生まれ変わりよぉ』

「何だと! お前ッ――!?」


 突然真実を当てられ、カリウスは胸を打たれたような衝撃に苛まれた。

 全知全能の如く振る舞う審判役に震撼する彼の横で、輪廻転生の事情を知るエレナは瞳を鋭くして天井を睨む。


「カリウスが生まれ変わりだって?」

「意味がわかりません、カリウスはカリウスです」

「輪廻転生のことを言っているのか。奴は少年の何を知っているんだ」


 聖人といえど事情を知らないユウやルイにアンジェは、レッグスの言っている意味がわからず首をかしげる。

 

『まぁ脱落者の輪廻の出口はどうでもいいか。エレナよ、お仲間を連れてでもいいからミルン大聖堂に今すぐ来やがれ。場所は目立つから城を出てすぐにわかる。話はそれからだ』


 告げられた言葉はそれで最後だった。

 エレナ、ユウ、カリウス、ルイは真剣な顔を見合わせ、その場を後にした。

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