第48話 人型
一同は言われた通り旋風の部屋に集まる。
「そうか・・・私は皆と言ってしまったな」
旋風は楓を見る。
「どうするキャロル?」
「上官は貴方でしょうに・・・。わたくし個人的には聞かせるべきだと思いますわ」
「そうか。なら楓も聞いてくれ。・・・キャロル。今の軍の少佐階級以上の構成を教えてくれ」
「元帥1 大将8 中将32 少将64 大佐128 中佐 300 少佐500 と記憶していますわ」
「では、各階級がなぜその人数なのか、意味は知っているかい?」
「元帥は別にして以下階級、その人数でかかればクラス5を倒せるという、基準の元に構成されていますわ。もちろん、昔の構成ですので実力が上がった今なら、半分の人数で倒せると言われておりますし、下の階級でも強力な使い手がいるから一概には言えませんが、基本構成はそうなっていると認識しておりますわ」
「そうつまり・・・対応できるのは最大でクラス5が12体という事だ」
「すげぇな、圧倒的じゃないか」
「甘いですわ守。総力で見ればクラス5が出現した所で、対応出来るようには見えますが実際はそれが日本各地、ばらばらに防衛していますのでそこまで確実ではありません。むしろギリギリのラインですわ」
「んじゃ大したこと無いのか?」
「そうでもありませんわよ大地。これでも世界中でもトップ5に食い込む実力ですわよ」
「日本でギリギリなら他の国はどうしてるんだよ? 国が崩壊したなんて話聞かないぞ?」
「対応出来ない国のゲートは、連合軍が共同で兵を出し合って防衛線を張っていますの。日本もそれに兵を裂いていますので本国の防衛力も最低限のものになっていますわ」
「ならその兵を日本に戻せばいいだろ?」
「撤退すればそこからドラゴンが沸き、結局はどこかが対応しなければなりません。それに各国防衛料の名目で国の資源を巻き上げてますので、日本も引き下がる訳にはいきませんの」
「日本最低じゃねぇか!」
「仕方ありませんわ。兵を派遣し資源を吸い上げてでも国力を維持しなければ、搾取される側に回るだけですもの。神代元帥はそのお金をなるべく孤児などに回るように努力しておられるようですが・・・」
「しかし、その兵も何時まで出せるかだな」
「何故です?」
「予言の書の【終焉の日】が来年へと迫っているからな」
「ネットとかでよく見るあれですか? でも本当とか嘘とか議論がなされていますけど・・・」
「あの予言は本物だ。混乱を避けるために世界各国で連携してわざと情報を錯綜させている」
一同に衝撃が走る。
「じゃ・・・じゃあ・・・来年には本当に世界が滅んでしまうんですか?」
「そうならないように皆、努力している。しかし・・・相当に厳しい状況になる事は間違いないだろう。予言の書にはクラス5が数多く出現するとの記述がある。それだけなら良かったんだが・・・いや良くないんだけれども。問題は・・・」
「【人型】ですわね」
「うん。それが問題だ」
「君達もネットなんかで噂は聞いているだろう? 今まで人型はこちらに危害を加えて来る事は無かった。故に無視していた。いや・・・無視せざるをえなかった。他国が以前、撃墜しようと攻撃を加えた結果ダメージもろくに与えられず、甚大な被害を出した上にすべて逃がしている。つまり人型においてはまだ一度も勝利した事が無いのだ。現在確認されている人型は7匹その全てが女性の形をしている。その人型も攻めてくる可能性が高い」
「クラス5のその上という事ですか・・・」
「間違いなくそうだろうね。そして多分、神代元帥を初め上位将校達はその人型の相手をするだろう。するとクラス5の相手はそれ以下の者に委ねられるはずだ。もしかしたら同時にクラス4やそれ以下のドラゴンも出現するかもしれない。そうすれば間違いなく人手が足りなくなる。そうしたら学生の出陣もあるかもしれないんだ」
「そういう事ですわ千里。嫌でも戦わなくてはいけない状況になるかもしれないという事ですわ。もし予言を乗り切り平和になれば、その時は好きなようにすればよろしいですわ」
「・・・うん。わかった。 出来る限り頑張ってみる・・・。でも実際にドラゴンに対峙したら逃げ出しそうになっちゃうかも・・・だけど」
「その時はわたくしが首根っこ掴んで、前線に放り出しますわ」
「ええ・・・」
「安心しろって! 俺らがついてるからよ!」
大地は守と沙耶の肩に腕を回し千里に笑いかける。
「ありがとう・・・みんな・・・」
千里は涙を拭く。
「所で氷雪会長。人型は一体何を調べているのかご存知ですの?」
「いや・・・攻める際、警備の手薄な所を調べているのか。指揮系統を見ているのか・・・はっきりとした事は分からないらしい。しかし、高度な知能を持っている事は間違い無いだろう」
「今のところ攻めて来るという事以外は、何もわからないという事ですわね」
「そういうことになるね。だからみんな・・・頑張って強くなろう」
「はい!」
一同は力強く返事をした。
ドアをノックする音がする音がする。
「どうぞ」
「遅くなって申し訳ありません。夕食の準備が出来ております」
「さ、皆さん食事に致しましょう」
「そうだな! 腹が減ってはなんとやらって言うしな!」
「あら、大地。貴方にはイワシしかありませんわよ?」
「キャロル!? いや、キャロル様! ごめんなさい! 許して!」
「冗談ですわよ。では、食堂へ参りましょう」
大地はホッと胸を撫でおろし、食堂へと向かった。
食事を済ました後、部屋に戻った大地は携帯を取り出し、電話をかける。
「もしもし? ばっちゃ?」
『大地か!? お前から電話なんて珍しいのう。ばぁちゃんは嬉しゅうて嬉しゅうて』
「ははは、所で相談があるんだけど」
『ばぁちゃんに出来る事なら何でもやるぞ!』
「流石ばっちゃ! ほら、俺が昔良く遊びに行ってた近所の鍛冶屋の爺さんが居ただろ? あの人に会いたいんだけど」
『ああ、刀坂(とうさか)爺さんか。しかし・・・うーむ・・・』
「難しいのか? もし会えるなら、俺、夏休み中は九州のばっちゃの家に帰ろうと思ってるんだが・・・」
『帰ってくる!? 大地が!? よし分かった。大丈夫じゃ、問題ない! で、いつ帰って来る? ワシは今東京じゃから、一緒に小春のドラゴンに乗って帰るかのう?』
「いや、俺キャロルの親父さんの島で皆で修行してるから、一週間後位になるかな。もしかしたら俺のチームメンバーも数人行くかもしれないから」
『大久保の島というとあそこか・・・。という事は今日の戦いを見たのか?』
「大変だったみたいだな。ばっちゃも、もう歳なんだからあんまり無茶するなよ?」
『心配するでない。何があってもワシら大人で何とかする。子供は気にせず子供らしくしておればよい。とにかくこっちに来る前日には連絡をおくれ。もしかしたら軍の関係で家にはおらぬかもしれん。その時は
「一花姉!? いや・・・その時はばっちゃ居なくても好きにやるから呼ばなくていいよ!」
「人を招くのに任せきりでは面目が立たん。世話人として置いておく。おっと・・・呼ばれたのでこれで、帰郷を楽しみにしておるぞ大地」
「ちょっと、ばっちゃーーー」
しかし桜からの返事は無かった。
「一花でございますか。あの、娘は今何をしているのでございますか?」
「さぁ? 俺は親父達と暮らしていた時は、一花姉はばっちゃと暮らしてたし、俺がばっちゃの家に住むようになった時には、もう一人暮らししてたから、盆・正月以外あんまり会う事はなったけど・・・苦手なんだよなぁ・・・。とりあえずキャロルに報告しとくか」
大地はキャロルの部屋へ向かった。
キャロルの部屋では皆もうすでに集合し、コーヒーを飲みながら何やら話し合っていた。
「・・・で、どうでした大地?」
「いいってよ。で、どうするんだ? キャロル本当にお前来るのか?」
「勿論ですわ。しかしその事なのですが・・・」
「俺らも行っていいか? キャロルと大地が居ないんじゃ学校で訓練してても寂しいだろ?」
「いいぞー?・・・ってちょっと待ってくれ! 来る人は手を挙げてくれ!」
その場の全員が手を挙げる。
「まてまてまて! 氷雪会長と楓ちゃんも来るのか!? いや・・・いいんだけど、いいの!? 許可とか何か色々!」
「聞いてみなければ分からないか、長期外泊するのであれば付き添いは必要だろう。自ら申し出れば大丈夫だとは思うが」
「私もお兄ちゃん達と一緒がいいです! 誠さんの所も楽しいんだけど、お兄ちゃん達と一緒にいる方がもっと楽しいですから!」
「ああっ! 楓は本当に可愛いな!」
旋風は楓を抱き寄せ頬をスリスリする。
「ま・・・田舎の家ってのは無駄に広いから、何人でもウェルカムだぞ!」
「待って下さいまし。わたくし達は近くのホテルに宿泊致しますので、迷惑はかけません。電車かバスで向かいますわ」
「電車なんか走って無いし、バスは一日朝と夜の2本。しかもバス停まで歩いて1時間かかるからやめといたほうがいいぞ」
「・・・本当に日本ですの?」
「日本だよ! とにかく泊まってけって。ばっちゃも喜ぶだろうし」
「そうですか・・・ではお言葉に甘えさせて頂きますわ」
しばらく雑談したあと就寝時間となり、それぞれの部屋に戻って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます