第26話 6月

結局6月に入っても剣は帰ってこず、7月の試験のためキャロルは昼休みに 本田 太 をチームに誘うべく3組へと向かう。


「では勧誘に行ってまいりますわ」


「おう、頼んだぜキャロル」


しばらくしてキャロルが帰ってくる。


「どうだった?」


「話になりませんわ! 何を言っても『ドスコイ』しかおっしゃらないので、会話にすらなりませんでしたわ! 他の方を探したほうが早くってよ!」


「太君は昔からそうだから・・・私も付いていこうか?」


「他を探すほうが良いと思いますが・・・正直あの戦闘力、他に取られれば厄介ですし・・・いいでしょうもう一度参りましょう」


3組に入るキャロルと千里。


「うわっ・・・又来たぞ1組の大久保。あと後ろのは円城寺だっけ」


「校庭に城を作ったっていう総合部員だろ? 太の奴もあんなのに絡まれるなんて可愛そうだよな」


一部の生徒が陰口を言う。


「でぇえええい!」


ゴスっと陰口を叩いた生徒にチョップと食らわせる。


「何すんだ白髪!」


「太が可愛そうって言っただけで怒るなよ妙・・・」


「陰口を叩くなんてみっともないよ君達~男なら堂々としろ!」


妙はキャロル達の所へ歩み寄る。


「ごめんね~・・・キャロルっちと千里っち。うちのクラスのもんが」


「いいですのよ別に。等級が低ければ馬鹿にされるのも仕方ありませんわ。・・・貴方は良い方ですわね」


「いやぁ~良く言われるよ~はっはっはー! 太でしょ? おーい太!」


「太君! ちょっといいかな?」


太は千里を見るとガタッと席を立ち教室を出る。

廊下で立ち話をする3人。


「先ほど説明した通り、わたくし達のチームに入ってくださいまし」


「ドスコイ」


頭を抱えるキャロル。


「これですの。話会話になりませんの」


「ちょっと待って・・・。私が話してみるね。太君。今度の大会どこかのチームにもう入っている?」


「ドドスコイ」


「まだ入って無いって!」


「貴方会話が出来ますの!?」


「私、中学の時太君とは同じクラスだったし。中学の時も落ちこぼれてた私に、優しく話しかけてくれて・・・そこから仲良くなったんだ。だから話してるがわかるの」


「貴方といい、守といい・・・」


「守君がどうかしたの?」


「いや、続けてくださいまし」


「太君7月の定期昇格試験私たちの、Eチームに入って欲しいなと思って・・・どうかな?」


「ドドスコイコイ」


「千里が居るなら入るってさ! やったねキャロルちゃん!」


「これで、何とかなりそうですわね。本田さんは無手術部に所属されてましたわよね? 良ければ週に1日2日こちらの武活に参加して下さらないかしら。出来れば今日の放課後にでも」


「ドス」


「分かったって!」


教室に戻る2人。


「チームが揃ったのは有難い事ですが・・・沙耶といい本田さんといいコミュニケーションが取れない人が2名も居るのは頭が痛いですわ・・・」


「太君は素直でいい人だから安心して!」


「それはわかりますが・・・」


ー放課後校庭ー


「えっと・・・こちらは今度の7月の定期昇格試験の6人目のメンバーで、私の中学の時の同級生で1年3組の本田 太君です。」


「ドスコイ」


「俺は、黒田 守。お前の実力は知ってるぜ! 守って呼んでくれ、よろしくな!」


「本田っていやぁ振り分け試験の時、威力測定で特A取ってたな! こいつは頼もしいぜ! 俺は相良大地ってんだ! 大地でいいぜ、よろしく!」


「種子島 沙耶。沙耶でいい」


「そしてこのわたくしは、この部の主将 大久保キャロルですわ! キャロルでよくってよ」


「ドスコイ」


「あ・・・太君は家庭の事情でドスコイしか喋れないの・・・。ちなみに今のは好きなように呼んでって言ったの」


「面白い奴だな! 仲良くなれそうだぜ、な、大地!」


「しかし太り過ぎだろ・・・見ろよこの腹ブヨブヨ・・・うわっ、固てぇ・・・」


「さて太、早速実力を見せて頂けますか? そうですわね・・・あの1tの鉄球を出来る限り遠くへ飛ばしてくださいまし」


鉄球の前に立つ太。両手を前に突き・・・そこから一瞬にして鉄球にぶちかます。

勢い良く弾かれた鉄球は、はるか遠くの校庭の壁に突き刺さり静止する。


「太君すっごーい! 中学の時より遥かに強くなってるよ!」


「あの・・・もう太1人でいいんじゃねぇか・・・?」


「太単でいこうぜ、太単」


「何言ってますの! 籠手田聖や山田三四郎の両名もこれほどとはいかなくても、近しい事は出来ましてよ!」


「ドスコイ・・・」


「確かに凄い【発気】です・・・しかし、連続では撃てず。仕切り直しが必要になってきますわ。一撃でしとめられない場合隙が大きいですわね・・・それを守、貴方がカバー致しますのよ」


「出来る気がしねぇが・・・やるしかねぇな!」


「その意気ですわ。さ・・・陣形について説明致しますのでミーティングルームへお願い致しますわ」


ーミィーテングルームー


「試験は3キロ四方の囲まれた、森・平坦な岩・ビルの3種類のステージの中で行われますわ。太と守は前衛で敵を食い止めて下さいまし。中衛でわたくしが心伝術を使い指揮をとりつつ、後衛で狙撃をする大地と沙耶に敵を、近づけさせないように努力致します。千里はわたくしに背中を合わせ、わたくしの後方を守りつつ魔力の供給をお願いします。これが基本とする陣形ですわ」


「相手の前衛が厚い場合などは、わたくしが前衛を担います。大地はその時ハンドガンに切り替えて、沙耶の所まで下がり護衛してくださいまし。千里はさらに後ろで2人の護衛をお願い致します」


「お前が一番にやられちまったら・・・誰が指揮取るんだ?」


「わたくしが一番にですって!?・・・可能性は少ないですが・・・その場合大地を指揮官として下さいまし」


「やっぱり俺しかねぇよなー!」


「大地より千里の方がいいんじゃ・・・」


「わたくしがやられているという事、は前衛が壊滅してしまっている可能性があるという事。そして後衛3人の内一番戦闘で、役に立たないのが大地ですわ」


『なるほど』


「おい! お前らひでぇな!」


「冗談ですわ。沙耶は口下手で、千里は自信が欠けていますの。大地、貴方ちゃんと戦略の勉強を今日からしてくださいまし」


「げ・・・マジかよ・・・」


「マジですわ。では明日より、仮想式戦略盤にての訓練も混ぜていきますので、よろしくお願いしますわ」

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