ドラゴンズゲート～Dragons gate～

第19話 隊長

記者会見を終えた誠は裏の通路へと入る。そこには咲と桜が待っていた。

「しぼられたようだのう誠」

「気にすんなジジィ、なんなら俺が殺して来ようか？」

「ほっほ・・・すまんのう２人とも。そして久しぶりだな桜」

「うむ。ほれ九州土産の糖レモンだ。好きだったろ」

お土産を受け取る誠。それを咲に渡す。

「咲、すまんが席を外してくれんか？」

「又かよジジィ！　そいつと話すときいつも俺をのけ者にすんだよ！　だからそのババァは嫌いなんだよ！　このお菓子1人で全部食っちまうぞ！」

「駄目じゃ。では桜屋上へ行こうかのう」

屋上へ向かって歩き出す２人。

「ジジィのバカ！　ババァと何話したかこっそり後で教えろよな！　絶対だぞ！」

ー屋上ー

屋上から２人を夕日を見ている。

「桜・・・最近のう・・・よく黒田先生が夢に出てくるのじゃ」

「そうか・・・先生は何と？」

「日本は平和か？　子供達は希望を持てているか・・・とな」

「で、お主は何と答えるのだ？」

「ワシは・・・何も言えずそこに立っておる。先生に胸を張って報告出来んのだ。ワシより先生が生き残った方がよほど良い国になったといつも考えてしまう。こんな情けない姿を先生が見たら何とおっしゃるだろうか・・・」

「先生は何もおっしゃらないよ先生なら・・・」

桜は、樹木のようなもので出来た拳を握り締め思い切り誠の顔面を殴った。

「こうするだろうね」

殴られた誠はその場に尻餅を付く、鼻から鼻血が滴り落ちる。

「いつまでも先生に頼ってんじゃないよ！　しっかりしろ！　アンタは先生が選んで私達が認めた隊長でしょうが！」

桜は誠に手を伸ばす。その手に引かれゆっくりと立ち上がる。

「ワシを隊長と呼ぶ者はもうお主だけになってしもうたの・・・」

「懐かしんでおる暇はないぞ。ワシらにはもう時間があまり無いのでの。特に前は」

桜は屋上から飛び降りそのまま去って行った。

誠が屋上からの階段を降りた所に咲が体操座りをしている。

「咲・・・お主・・・食べたな」

「うるせぇ」

咲の横には空のお菓子箱が転がっていた。

一方、事情聴取を終えた一同は精密検査の後病室を後にする。

「じゃあなお前ら！　お前らは大物になる。この俺が保証するぜ」

「小物に保証されても困りますわ」

「はっはっは！　そりゃそうだ！　じゃあな、頑張れよ」

鉄延と小春に別れを告げ病院の出口で回収されていた武器等が返却された。

「ダサいわね」

「うん、ダサいな」

仁・コロは次々に言う。その視線の先には大地のスーツがあった。

「何ですって～・・・！　これだから芸術センスの無い一般人は困りますわね！　貴方ならこのスーツの良さが分かりますわよね守！？」

「お・・・おう？」

「そんな事よりキャロル！　肉奢ってくれるんでしょ行くわよ！私は霜降りより赤身のいい所一杯食べたたーい」

「コロお前・・・あんなの見た後で良く肉とか食えるな・・・」

「じゃあ仁は帰ってろ」

「あ、キャロル俺霜降りで」

「キャロル・・・俺も肉食べていいか！？」

「大地アンタ５８発撃ちましたわよね？　しかも殆ど外してますわ」

「５８万！？えっと・・・出世払いでお願いします！」

「冗談ですわ。軍に経費として請求致しますのでご心配なく」

「んじゃあ肉食えるのか！？」

キャロルはため息をつく。

「貴方達さっきの話聞いてませんでしたの？　わたくしは相良さんの食事の買出しを今から行いますので先に帰りますわ。行くなら私抜きで行って下さいまし。お金が必要ならこのカードをお貸しいたしますわ」

「うーん・・・本人居ないのに食うってのは何か違うなぁ・・・帰るか～コロ」

「私は気にしないからクレジットカードくれ」

「やめろって・・・大体俺らも晩飯買いに来てたんだったろ買い物の続きしようぜ。今日は豚鍋だ」

「・・・牛肉がいい」

「じゃ・・・俺らも帰るから又明日学校でな！」

コロと仁はそう言って去って行った。

「では私もこれで失礼致しますわ。大地、相良さんの好みを教えて下さるかしら？荷物持ちとして買い物に付き合いなさい。肉も好きなだけ買って宜しいですわ」

「まじかよ！？行く行く～！」

「ではお２人とも又明日」

守は手を振りながら（肉俺の分も頼む）というジェスチャーを大地に送り２人を見送る。

「・・・で、大丈夫か千里。さっきからずっと黙り込んだままだけど」

「あはは・・・ごめんね。みんなすごいよね、ちゃんとした目標があって・・・。私なんてこの体質をのせいで、なんとなく入っただけだから皆みたいな目標持てないよ」

千里はぽろぽろと涙を流し泣き出してしまった。

「私・・・死にたくないよぉ・・・」

千里は守の胸で泣く。

「なら戦わなくていいよ。でも戦いを辞めたって誰かがその代わりをするだけだぞ。何かあったときに自分の無力さを恨む事にならないように、修行だけはしたほうがいいと思う。皆それが分かってるから頑張ってる・・・多分。少なくとも俺は今回自分の無力さに腹が立ったし、死んだ人達を見て死にたくない。じゃ無くて救いたかったと思った」

「・・・」

「まぁ・・・無理にとは言わないけどＥチーム＋αには残って欲しいな。チームで出動する事になっても千里は参加しなくていいからさ」

「うん。私頑張ってみる」

（キャロルならもっと上手く伝えられるんだろうな）

「さ、帰ろうぜ！　送って行くぞ」

千里を自宅へ送り、守も帰宅する。

「ただいま～。おっ優香姉帰って来てるのか」

「守～！　無事で良がったよぉ～・・心配じたよおぉお」

優香は守に抱きつく。

「や・・・やめろよ優香姉！　いでで！　この馬鹿力！」

「あれ？　守それ何持ってるの？」

「ああ・・これは今日行ったケーキ屋で買ったんだよ、優香姉と母さんの分」

「母さ～ん！　守がケーキのお土産買ってきてくれたんだってさー！」

「あっ！　コラ！　勝手に取るな！」

ケーキの箱を開ける優香

「これは・・・土と石？」

「モンブランだよ！　げ・・・ぐちゃぐちゃだ」