第12話実践と焦り

ウーーーーー!


授業中サイレンが鳴り響き、教室の前に設置されている画面にとある場所が映し出される。


『東京第3ゲートにてクラス2甲龍型ドラゴンの出現が確認されました。軍曹級以上少尉階級以下の者に加え待機中の、中佐2名大佐1名は戦闘準備を整え現地へ急行して下さい。』


「軍曹階級以上って事は1年生も出動するのか!?」


驚く守。


「当たり前ですわ。軍曹階級以上は軍の正規戦力ですのよ。ま・・・今回は実践経験を積ませるためのものですわ。中佐・大佐のアシストがあればまず敗北はあり得ませんし、医術班も動員されているはずですので死亡も考えにくいですわ。まぁあのドラゴンは噛ませ犬って所ですわね。・・・本来であれば私もあの場所にいるはずでしたのに・・・」


キャロルは悔しそうに画面を見つめる。


「俺・・・ドラゴンとの戦闘なんてニュース以外で見る」


「普段ドラゴンとの戦闘中は厳戒態勢が敷かれマスコミなどは入れませんし、もし映像をネットなどに流そうものなら厳正に処罰されますわ。許可された映像のみがニュースで放映されます。ですがこの特戦校では戦闘の参考し、対策を学習させるためこうして放映されるのですわ」


「へー・・・そうなのか。でもあのドラゴン何か可愛そうだよな・・・まだ何もしてないんだぜ・・・」


「あんた心底バカですわね・・・これからするであろうから駆除しているんですのよ」


「でもよう・・・」


そういって再び画面に目を向ける守。そこには苦痛に悲鳴をあげるドラゴンの姿があった。その悲鳴に守はもどかしい気持ちになる。


「まぁ・・・残虐と言えばそうですわ。でも日本では保護を優先していますので、今回も捕獲という事になるでしょう。クラス2以下は滅多に討伐したりは致しませんわ」


「そうか・・・少し安心した。・・・おい、何だあれーーー」


指差す守の先には巨大な金色の犬と黒色の犬の2匹が戦っていた。


「1年生狗神ペアね・・・強いですわよあの方達。見てなさい出しますわよあの2人の奥義【神砕き】」


大口を開けた2匹が同時に噛み付く。甲龍型の固い鱗をものともせず砕き肉を抉り取る。


「狗神ペアってあれで同じ1年かよ!?」


「あの方達は本当の天才ですわ。でもあの2人をもってしてもクラス2にはまだかないませんわ」


そう言った瞬間2匹はドラゴンの爪に摑まれ投げ飛ばされる。激しくビルに叩きつけられ気を失ったのか、金髪の女性と黒髪の男性の姿へと戻ってしまった。すかさず医術班が駆け寄り医療術を施す。


「おいおい大丈夫かよあいつら!?」


「心配要りませんわ。上官方の強力な防護術を身に纏っておりますので大したダメージはありません事よ」


「へー・・・おっ捕獲された」


『クラス2甲龍型捕獲完了致しました。戦闘参加者は通常業務に戻って下さい』


中断されていた授業が再開し、優香が説明を始める。


「はい、ご覧の通り今回のドラゴンはクラス2の甲龍型でした。戦略としては鱗の隙間や間接、もしくは口内を狙い攻撃を加えるか、狗神ペアのように硬さを上回る攻撃を加えるか・・・まぁこの方法が出来るのは一部の攻撃特化型能力者だけですのでーーー」


優香は先ほどの映像を解説する。そうして1日の授業は終了し、放課後4人が揃う。


「さて・・・今日も頑張るか!」


ガントレットを着用し始める守。そこへキャロルが歩み寄る。


「な・・・何だよキャロル! お前まだこのガントレット狙ってんのか!?」


「違いますわ。貴方はまだそのガントレットを着けるのはまだ危険ですわ」


「危険って何が? 危ない事が何かあるのか?」


「そのガントレット自体が危険なのではなく、取り巻く環境が貴方にとって危険という意味ですわ。その価値を知るものが現れれば盗もうとする者や、殺してでも奪い取ろうという者が現れますわ。少なくともそのガントレットを守れる位強くなってから着用した方が望ましいと思いますの」


「なるほど・・・じゃあしまっとくか」


「ちょっと待って下さいまし! 私が預かって差し上げてよろしくてよ。 大久保家の高度なセキュリティで確実に保管致しますわ」


「とかいって盗む気だろ」


「し・・・失礼ですわね! 大久保の名に誓ってそのような事は致しませんわ。ただ・・・交換条件として預かっている間その素材を研究させて頂きたいですの。その研究は必ずあなた方の武具を作成するのに役に立つはずです。悪い条件では無くて?」


「まぁ・・・そこまで言うなら」


守はキャロルにガントレットを手渡す。

キャロルは少しそれを眺めウットリしたあとすぐアタッシュケースにしまいこんだ。


「さてみなさん皆さん集まってくださいまし」


キャロルは3人を集める。


「皆様に今日はコレをお渡し致します」


キャロルは鞄から武具をいくつか取り出す。


「守には代わりのガントレットを。一応ちゃんとクラス1ですが甲龍型の龍麟鉱を使用しています。軽くて丈夫ですわ。」


守は早速着用してみる。


「おお! さっきのよりしっくりくるぜ! でもいいのか貰っちまって。高いんだろその龍麟鉱ってやつ」


「ガントレットの利子だけでもお釣りがきますわ。御気になさらず。千里には昨日渡しましたので次は大地ですわね。大地、貴方はまだ魔力が全く使えませんので、しばらくはこれを使ってくださいまし」


「これは・・・?」


大地はスーツと盾、それにハンドガンとスナイパーライフルを受け取る。


「それは知龍型の鬣(たてがみ)を編みこんだスーツですわ。貴方は魔力が流れてないので、肉体強化や防衛魔術の類が使えないので生身ですわよね。それを補うスーツと龍麟鉱で作ったシールドよ。防御面に重きを置き、中衛からそのハンドガンで牽制を行います。銃の弾の弾頭には戦龍型の牙を使用していますのである程度なら貫通も可能ですわ。でもお高いので実践以外は普通の銃弾を使用して下さいまし。あと屋外での銃の携帯許可を学校へ忘れずに提出してくださいまし。外出の際は必ず所持し、家では手入れを怠らない事ですわ」


「ありがたいんだけど・・・このフルフェイスのマスク・・・いるのか?」


「マスクは男のロマンですのよ!」


「お・・おう。あ・・・とりあえずありがとな!」


「では訓練を始めますわ。守は私が付いて力を流しますので使い方を覚えて下さい。千里は水を入れたコップを少し離れたところから沸騰させるコントロールの訓練。大地は・・・腕立て100回。腹筋100回ランニング20キロその他基礎訓練」


「何で俺だけ部活みたいなメニューなんだよ!?」


「はい! ではさっさと始めなさい! 大地はさっさと走って来いですわ!」


キャロルにお尻を蹴られて走り出す大地。3人はそれぞれの目標に向かって訓練を始める。


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