第10話罪と罰2
校長室にキャロルと誠、それと咲を加えた3人が集まっていた。
「さて、キャロル君。私に話しがあるという事だが・・・どうしたんじゃ?」
キャロルは少しそわそわしながら話始める。
「私は今回重い罪を犯しました。謹慎だけというのは軽過ぎますわ、それ相応の罰をお願い致します」
「ふむ・・・」
誠は髭を触りながらキャロルを見つめている。
「その前に1つ質問じゃ。お主はなぜ力を欲したのじゃ? その答え次第じゃ」
「私は・・・神代先生、貴方みたいな英雄を目指していますの。常に危険な前線に立ちながら的確な指示を出し、多くの人を救った貴方こそ私の憧れですわ。貴方の出版した兵法指南書を全部読ませて頂きましたわ。その思慮の深さは私の及ぶ所ではございませんでした。覚えておられるか分かりませんが、所々改善の余地ありという文章と内容を神代校長先生様宛に送った事があります。若き日の過ちでしたわ、この場を借りてお詫び致します」
キャロルは敬礼を行い謝罪する。
「ほっほっほ。お主の正義の心は本物じゃ、人には必ず過ちがある。その時、道を反れたのであれば正し、外れたのであれば厳しく罰する、それが先人たる我々の役目じゃからのう。お主には今後多くの人命を救う才能がある。それはここにいるワシとそこの咲が保証する」
「勿体無いお言葉・・・でも私にはそんな才能・・・ありませんわ」
キャロルは目を伏せた。
咲が前に出て話始める。
「おい、金髪・・・てめぇ生まれつき生命力・・・つまり魔力の発生が少ねぇだろ。昨日治す時に中身見させてもらったぜ。それに加え、体内に魔力を巡回する回路まで狭いときてる。普通ならコアを持った所で何も出来ない凡人中の凡人・・・いやそれ以下の雑魚だ」
キャロルは唇を噛み締める。その唇からは血がにじみ出ていた。
咲は続ける。
「だがてめぇは諦めなかったんだろ? 狭い回路に一気に無理やり魔力を流し少しずつ拡張していった。時には回路を焼きつぶし別の回路を繋ぎ合わせた。自分で自分を手術するようなもんだ、想像以上の激痛だったに違いねぇ」
(神代チルドレンと言われる神代元帥直属の部隊、その中でも医術部隊の最高責任者 通称【白衣の悪魔】
「それを可能にしたのは正確な魔力コントロール。それに医学と魔術の知識。流石のこの咲様も恐れ入ったぜ。回路の拡張により瞬間の爆発力は出るようになったが、肝心の潜在魔力はからっきしだ。同情するぜ。
お前は天才でもなんでもねぇただの雑魚だ、だが魔力供給の補助員さえ確保出来れば中距離での攻撃に加え、どんな傷をも癒す医術者になれる最高の戦士になれる。・・・といっても医療術はこの咲様にはまだまだかなわねぇ、だから俺が直々に鍛えてやるつーこった。お前は死ぬはずだった沢山の人を救える。そんな奴をつまらねぇルールで手放すわけねーだろ。バーカ」
畳み掛けるように説明する咲。
「ほっほっほ。すまんのうキャロル君。咲君は褒めるのが下手でのう」
「褒めてねぇよクソジジイ」
「とにかくキャロル君。咲君が君を鍛えるかはともかく・・・私達は君に期待しておる。精進してくれたまえ」
「何だとジジイ! 金髪は俺にくれるって言ったじゃねぇか!」
「言っておらぬ。ほっほっほ」
「騙したなジジィ~~~・・・!」
キャロルは複雑なのか、うつむいたまま話を聞いている。
それを見た誠は思い出したように提案する。
「キャロル君。君が相応の懲罰を望むならワシは君に1つ命令を下そうと思うのじゃが」
「命令・・・ですか? それが罰というなら私は従いますわ」
「では・・・」
こほんと小さく咳払いをして誠は言い放つ。
「君は今日から、黒田 守・相良 大地・円城寺 千里この3名の指南役を命ず!」
「え・・・ええええぇええ!」
キャロルは思わず大声を出してしまった。
「特に黒田 守が暴走しないよう力の使い方を教えて欲しいのじゃ。あやつは危険じゃが、鍛えれば最高クラスの戦力になるはずじゃ。大地君はちょっと訳ありで今の所はどうしようも無いが、千里君の圧倒的魔力もコントロールが出来るようになれば十分な戦力になるであろうし、将来君の優秀な補助員になりえるかもしれん。3人との関係は必ずお主の力になるはずじゃ。頼んだぞキャロル君」
理由は分かったが、納得いかず頭を抱えるキャロル。
「では話はこれにて、下がってよいぞ」
とぼとぼ歩いていくキャロル。
「所でキャロル君、最後に・・・君が昔ワシに送って来た指南書の改善点の事じゃが・・・今でもあの作戦の訂正は君が正しいと思っておるか聞かせてくれるかのう」
「今でも変わりませんわ。では」
そう言ってドアを閉めるキャロル。
「・・・ジジィてめぇ何考えてんだ」
咲は誠を睨む。
「彼女は確かに努力家の凡人じゃ・・・しかし彼女が1つだけ持つ天才的な能力・・・それは軍才じゃ。彼女はワシが待ちに待った後継者になりうるかもしれぬ」
「ジジイはあいつに期待してんのか? ジジィが自分の後継者として将来側に置きたいって、そういう事なんだな」
「そうじゃ」
「この・・・ロリコンジジィ! あいつ若すぎるだろ! 犯罪だぞ! 俺くらいで我慢しとけ!」
「お主も十分若いじゃろう」
「わ・・・若いって・・・やめろ恥ずかしいだろ!」
咲は顔を手に当て顔を赤らめている。
「ほっほっほ」
校長室に誠の笑い声がこだまする。
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